考え方や子育てなど多くの人から共感を得ているタレントのpecoさん。2月1日には初エッセイ『My Life』を発売。制作中にたくさんのことに気づいたといいます。なかでもお母さまとの思い出は特別なものだったそうで──。(全4回中の4回)
両親が今の私をつくりあげてくれた
── エッセイの制作は簡単な作業ではないと思いますが、子育てとはどう両立されたのでしょうか。
pecoさん:基本的に、日中は息子がスクールに行っているので、その時間に作業していました。中学2年生の頃から妊娠中の22歳まで毎日ブログを書いていて、書くのは大好きだったので、「もうやだ、無理!」ってなることはありませんでした。
完成に向けて最後のほうで、丁寧に原稿をチェックする時期が続いたのですが、そのときは息子が寝た後にじっくり時間をかけてチェックしていました。
── 執筆しながら、思い出したり、気づいたりしたことはありましたか?
pecoさん:本当に愛して育ててもらったなあと、振り返ってめちゃくちゃ思いました。両親にすごく愛されて、自由に育ててもらったなあって。今の自分をつくりあげてくれたのは、本当に母と父だなっていうのはすごく感じました。
めちゃくちゃ古風な家庭で育った
── ご両親は、自由な価値観や感性をお持ちだったのでしょうか。
pecoさん:めちゃくちゃ古風な家庭です。父は、ザ・昭和の亭主関白って感じで怒ったらちゃぶ台をひっくり返しそうな人(笑)。子どものおむつを替えたことなんて1回あるかないかだと思います。
母もやっぱり、昭和の専業主婦みたいな感じです。毎日きれいに掃除をしてくれて、父が仕事から帰ってきたら出迎えて。新しい考え方とかっていう家庭ではなかったと思います。
ただ、母は、いい意味でおおざっぱで、ザ・大阪のおばちゃんみたいな人(笑)。「しゃあないやん、やってみーや」というのが口グセで、「くよくよしている暇があったら、とりあえず1回やってみたらいいやん」という感じです。
そういうマインドなので、新しい価値観という感覚より、「とりあえず1回やってみたらいいやん」って感じかもしれないです。
認め合うことよりも大切にしたいこと
── エッセイでは、「お互いを認め合うというだけでは、理想の社会は来ないのでは?自分の芯をしっかり持つことを大切にしたほうが、お互いにわかり合える社会に近づくと思う」といった趣旨の内容を拝見しました。「認め合うことが大事」だと思っていたので、そこでハッとさせられて。
pecoさん:「認め合わなきゃいけない」とか、「受け入れることが正義」みたいなのは何か違うなと思っているんです。多様性そのものはいいことではあると思うんですけど、じゃあ受け入れられない人が悪なのかっていうと、まったくそうではないと思うし。
そういうのは、一人ひとりの考え方なのであって、「受け入れるからヒーローだね」ってわけじゃなくて、ただ本当に、自分の大切にしたいものはちゃんと自分で大切にしたい。自分のことを否定されたときとか、自分とは違う考えの人が目の前に現れたとしても、「なんであなたは受け入れないんだ?」と闘うのではなく、「あなたはそういう考え方なんですね。ただ、私はこういう考え方なんです」って。それだけでいいと思うんです。
自分の芯の部分さえしっかりと持っておけば、目指したいって思う世界に、実はいちばん早く近づけるんじゃないのかなって思っています。
お友達を「素敵だね」と言えるあなたも「すごく素敵だよ」
── pecoさんは、子どもの頃から「まわりと違う感覚の自分を大事にしたい」と思いを大切に育ててきたぶん、自分の考えを持つことの大切さを知っていらっしゃるのかなと思いました。
pecoさん:ずっと、「人は人。自分は自分」って思っていて。自分と人を比べることはしないです。それこそ、息子に対してもそのことを意識しながら接しています。
例えば、息子が学校でのエピソードとして「あの子は走るのがすごく速いんだよ」と教えてくれたときとかは、「すごいね!でも、そういうお友達のすごいところを見つけられて、それを素敵だねって言えるあなたが、ママはすごく素敵だと思うよ」っていつも言っています。
人それぞれみんないいところがあるっていうのは、忘れないでほしいと思っています。
PROFILE pecoさん
タレント・ブランドプロデューサー。大阪府出身。10代から80年代頃のアメリカンカルチャーを取り入れたファッションで注目を集める。SNSのフォロワーは、Instagramは250万人以上、X(旧Twitter)は90万人以上。2月1日には、初めてのエッセイ『My Life』(祥伝社)を発売した。
取材・文/高梨真紀 写真提供/peco