シングルファザーとして子育てに奮闘した時期もある大浦龍宇一さん。再婚をきっかけに家族の形にさまざまな変化が生じました。苦しい時期もあった大浦さんの今の心境は──。(全4回中の3回)

8年間シングルファザーとして子育てに奮闘

── 2019年に再婚されるまでは、シングルファザーとして子育てに奮闘されていました。

 

大浦さん:息子が小学2年生のころからシングルファザーとして、再婚するまでの8年間、二人三脚でやってきました。ただ、思春期になって反抗期が激しかったり、その後、再婚をして家族のあり方が変わるなど、いくつもの事情が複雑に絡み合い、ほとんど口をきかないような時期もありました。

 

息子から直接言われた言葉ですが、それまでの私は彼にとっては自慢のお父さんだったそうなんです。でも、いろんなことが相次いで起こり、父親の弱さやダメな部分を目の当たりにすることになってしまって…。彼の心の中にいろんな葛藤があったと思います。

 

今も関係が完全に修復できているとは言いがたいですが、コミュニケーションが徐々に増えてきて、成人式の日には、「一緒に写真を撮ろう」と息子から言ってくれました。少しずついい方向に向かっていると感じているところです。

 

俳優の大浦龍宇一さんと息子さん
20歳の記念に撮った親子ショット

── 昨年11月のブログには、「息子さんから誕生日プレゼントをもらった」と綴られていました。

 

大浦さん:そうなんです。誕生日の朝、テーブルの上に包み紙が置かれていて、中を見ると、まっさらなノートとともに、「誕生日おめでとう」という手書きのメッセージが添えられていました。

 

実は、プレゼントに手紙を添えるということは、息子が幼いときから今でも、私がずっとやっていることなんです。ノートのデザインも彼なりにいろいろと考えて選んでくれたのでしょう。今の私の気持ちに寄り添ったものでした。目には見えませんが、息子の「心」を感じ、思わず胸が熱くなりましたね。

 

大浦龍宇一さんが誕生日のプレゼントとして息子さんからプレゼントされたノート
誕生日のプレゼントとして息子さんから贈られたノート

── 気持ちのこもった贈り物だったのですね。

 

大浦さん:やはり手書きのメッセージというのは、心がこもっていて、もらうと嬉しいものです。

 

小学校で児童の個別支援や学級運営の指導補助を行う学習指導補助員として勤務しはじめた当初、私なりに、どうすれば子どもたちと仲良くなれるだろうかと考え、息子に相談したことがあったんです。

 

その翌日、彼がそっと手紙を渡してくれて。そこには、前の晩に私が話した内容がびっしりと書かれ、さらに「その子のペースに合わせて、ゆっくり向き合ってあげるのがいいのでは?これは正直一番大切だけれど、一番むずかしい。」と、私が伝えたかったことをきちんと受け止めたうえで、彼なりの意見も添えられていました。息子の成長を感じてとても嬉しかったですね。

 

10年前、20歳の息子さんに大浦さんと息子さん自身が書いた手紙
10年前、20歳の息子さんに宛てて大浦さんと息子さん自身が書いた手紙も大切にとってある

── 年頃の男の子が親に手紙を書くというのは、なかなかないことだと思います。親子の絆を感じるエピソードですね。

 

大浦さん:もらった手紙は、誕生日に贈られたノートと一緒に、いつも持ち歩いています。

息子と2人暮らし、別居婚状態の今思うことは

── 息子さんは昨年20歳を迎えられたそうですね。今も一緒に生活していらっしゃるのですか?

 

大浦さん:実は今は、息子と2人暮らしなんです。妻は音楽活動で必要な楽器や機材もあるので普段は実家で生活していて。いわゆる別居婚状態です。ただ、夫婦関係は良好で、しょっちゅう電話で連絡を取り合っていますし、週1回は必ず会うようにしています。

 

ご存じかもしれませんが、2019年に夫婦間にトラブルが生じ、事実とは異なる報道をされてしまいました。記事の内容が大きな誤解を招くもので、公私共にかなりの誹謗中傷を受けました。時間をかけて話をすることで息子は理解してくれましたが、すごく傷つき、悲しい思いを数多くさせたと思います。その出来事を境に、息子と妻の関係性が変わってしまったこともあって、今は家族3人で暮らす状態ではないと判断しました。

 

── そうだったのですね。これからの家族のあり方について、どんなふうに考えていらっしゃるのでしょうか。

 

大浦さん:もともと私は「家族は一緒に住んだほうがいい」という考えなので、本音を言えば、家族3人で住みたいという気持ちは強いです。ただ、自分の考えを一方的に押しつけるわけにはいきません。どうすれば3人が幸せでいられるのか、一番いい家族のカタチってどんなだろうか…家族のあり方というものを、ずっと考えています。

 

夫婦は一緒に住むべきという私の思いもありますし、息子が20歳になったので、そろそろ独立してひとり暮らしをしていく時期かもしれません。それぞれの意向や思いも踏まえながら、家族が良い方向に進むように、努力しているところです。

 

PROFILE 大浦龍宇一さん

おおうら・りゅういち。1968年、京都府生まれ。立命館大学卒業後、俳優としてドラマや映画、舞台など幅広く活躍。代表作に、「この世の果て」、NHK連続テレビ小説『天うらら』、舞台『大人計画・キレイ』など。最新情報はオフィシャルブログ「LIGHT LIFE」で発信。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/大浦龍宇一