テレビ朝日アナウンサーの久冨慶子さんは、入社6年目にサッカー元日本代表・大津祐樹選手とご結婚されました。結婚1年後に始めた不妊治療と仕事の両立は「肉体的にも精神的にも大変だった」と振り返ります。ご夫婦のなれそめやお子さん誕生後についても伺いました。(全4回中の2回)

サッカー選手とは付き合わないと思っていた

── 大津祐樹選手とのなれそめを教えてください。

 

久冨さん:「やべっちF.C.」を担当していたので、サッカー選手とお付き合いすることは絶対にないと思っていて、スタッフにもそう言っていましたし、実際にサッカー選手とは会わないようにしていました。そんななかで、夫と友人も含めて数人で会おうということになり、恥ずかしいけれど夫のことがタイプだったので、「会ってみようかな、会うだけならいいかな」と思って実際に会うことになりました。いい人だなと感じて、友人も含めて会うようになり、二人でも会うようになりました。

 

夫には“チャラ男”という愛称があったのですが(笑)、私が会ったときはとても誠実で、お付き合いすることになったときも「結婚を前提に付き合ってください」と言ってくれました。当時の私は、結婚はまだわからないと思っていたのですが、お付き合いしていくうちに結婚するならこの人がいいなと考えるようになりました。

 

私自身は人生プランを描いていたときに、なんとなく35歳くらいで結婚できたらいいかなと考えていたのですが、夫は早く結婚したいタイプの人で。サッカー選手の選手生命は限られているので、それを考えたら今この人が「結婚したい」と言ってくれているのであれば私もこの人と結婚したいし、プランより少し早いけれど結婚しようと思って決めました。


子どももすぐに希望したのですが、1年間の妊活で授からず、クリニックに行ってみることにしました。クリニックでは、先生からさらっと「不妊ですね」と言われてとてもショックだったことを覚えています。

 

結婚式でウエディングドレスに身を包む久冨さん

── 不妊治療中に感じた心身の負担について聞かせてください。

 

久冨さん:普通に妊活をしている方も同じだと思うのですが、毎回生理が来るたびに受験で落ちたかのような心境になっていました。頑張ったからと言って次は“受かる”というわけでもなく、何とも言えない気持ちの連続でした。特につらかったのは、仕事との調整です。クリニックでの待ち時間や薬を入れる時間、日にち指定の通院と仕事の兼ね合いがうまくいくのかなど、治療のために退職される方がいるのも理解できるほど大変でした。

 

ただ、会社の先輩で仕事をしながら授かっている方を知っていたし、仕事と治療を両立できることを証明したいという思いで、一部のスタッフなどに相談しながら治療を続けていました。

 

私の場合はたくさんの薬を飲んだり、膣に入れたり、注射したりという方法で。ホルモンバランスが変わるためか、集中力がなくなってミスをしてしまったり、むくんだり、肌が荒れたりと、肉体的にも精神的にも大変でした。

 

── 励みになった言葉などはありましたか?

 

久冨さん:友人に現状を話したり、治療の記録を残している人のSNSを見て勇気をもらったりしていました。なかでも、東尾理子さんの本には励まされました。とにかく前向きで、切り替えが上手。落ち込まずに淡々と事実を受け止めていて、素敵だなと思いました。すべてがポジティブで、うまくいかなくても「次!次!」という気持ちにさせてくれる、パワーをもらえる本でした。特にタイトルのTGP(Trying to Get Pregnant)という言葉が好きなんです。不妊治療と言うと、言葉が重たい印象ですが、「妊娠しようとがんばっている」ってとても前向きですよね。

 

── なかには夫婦間でモチベーションの差が生まれるという方もいらっしゃいますが、久冨さんご夫婦はいかがでしたか?

 

久冨さん:夫は子どもが大好きで、不妊治療のクリニックを勧めてくれたのも夫でした。タイミング法、人工授精を経て、体外受精にステップアップするときは少し心配そうでしたが、始めてしまえば一緒に頑張ってくれました。

 

自己注射するときも「打ちたい!」と言って、打ち方を練習してくれました。夫に注射を打ってもらうのがちょっと怖いしおかしいので、笑いながらやってもらったのを覚えています。女性の負担が大きいことが多い不妊治療なので、パートナーの方は明るく一緒に取り組んでもらえたら、とても支えになると思います。

「この泣き声、最高!」育児中に救われたことも 

── 妊娠後、大津選手の移籍に伴って静岡県浜松市へ転居されました。慣れない土地への戸惑いなどはありましたか?

 

久冨さん:結婚したときに、サッカー選手なので遠くへ引っ越すこともあるだろうと覚悟はしていました。私が独身だったらずっと東京での生活になるなかで、結婚したからこそ違う土地に住めるチャンスがあるんだと考えると、大変ではあるけれど楽しそうだなとも思っていたんです。当時は妊娠中で、ちょうど息子が生まれるタイミングでジュビロ磐田へ移籍するということになったので、何の迷いもなく夫についていくことができました。

 

でも、東京の産院で産んだときに、産後の授乳がこんなに大変なのだということが初めてわかって。里帰りをしなかったので、このような状態で静岡に帰ってからうまく育てられるのかなと急に不安になりました。

 

── その不安はどのように解消したのですか?

 

久冨さん:浜松に戻ってからすぐに、夫がチームメイトの山田大記選手のご家族と会う機会を作ってくれて、山田選手の奥さんと仲良くさせてもらうようになりました。産後しばらく経ってだんだん外に出られるようになってからは、山田選手の奥さんをきっかけにいろいろな選手の奥さんと交流するようになったり、同じ静岡県内に住んでいる元テレビ朝日アナウンサー・竹内由恵さんとも会ったりするようになりました。由恵さんの上のお子さんは息子とちょうど1か月違いなので、一緒に遊んでもらえて。本当に周りの人に支えてもらったなと思います。

 

もちろん友人と気軽に会えなくて寂しいなと思うこともあったのですが、産後間もないときはコロナ禍だったので、東京にいたとしてもそんなに友人と頻繁には会えない状況でした。寂しくなったときは仲の良い友人に「Zoomしよう」と言って、息子を寝かしつけた後にみんなでおしゃべりをして、遠くの友人にも静岡でできた新しい友人にもたくさん支えてもらいました。

 

あとは、静岡の人たちが本当に優しくて、子育てで嫌な思いをしたことがないんです。以前、息子がマンションのエレベーター内ですごい勢いで泣き出してしまったことがありました。どうしようと焦っていたら、乗り合わせた方が「あーこの泣き声、最高!かわいいね」と言ってくださって、とても救われたことがありました。静岡ではいろんなところで「かわいいね」と話しかけていただくし、道も広くて歩いていてぶつかる心配もないので、とてもありがたいです。

「きょう保育園だよ。ごめんね」は絶対に言わない

── お子さんについても聞かせてください。

 

久冨さん:今2歳11か月になりました。私は2年4か月間産休・育休を取って昨年4月に復帰したので、2歳を過ぎてから本格的に保育園へ行くようになりました。家では私がサポーターになって、息子がサッカー選手役をして小さいゴールにシュートを決めています。

 

応援することも大好きで、家で「オレオレオーレ♪」と歌っていることもあります(笑)。私には「ママきょうお仕事?」と聞くのですが、夫には「パパきょう練習?」と聞くので、パパがサッカー選手だということはたぶんわかっていて、なんとなく使い分けているように感じます。

 

── 大津選手はどんなパパですか?

 

久冨さん:とてもいいパパだと思います。息子は新幹線が大好きなのですが、最近は夫が新幹線になって「はやぶさに乗りますかー?」と聞いて、息子が夫の上に乗っかると「実はこれは…怖いはやぶさでしたー!」と言って変な動きをして笑わせていますね。

 

息子の体重は14キロを超えているのですが、私ではできないようなダイナミックな遊びをしてくれたり、ダンベルのように子どもを持ち上げたりと、激しい動きをたくさんしてくれています。最初のころよりおむつ替えもしてくれますし、お風呂もよく入れてくれています。

新幹線好きの息子さんと「リニア・鉄道館」へ

── ご夫婦で教育方針を話し合うこともありますか?

 

久冨さん:まだこういう学校に行かせようなどは考えていないのですが、「やりたいことをやらせてあげられるように環境を整えよう」とは話し合っています。3歳になると習い事も通えるところが増えてくるので、体を動かすことが好きそうな息子には、サッカーや体操、水泳などをやらせてあげたいですし、英語にも興味がありそうなので、早いうちに習わせてあげたいです。

 

息子には怒ることももちろんあるのですが、毎日何があっても「大好きだよ」と伝えるようにしています。スキンシップを取ることも大好きが伝わる手段のひとつだし、大きくなったらできなくなってしまうと思うので、毎日たくさん取っています。

 

何より、夫からは「保育園に預けるのが申し訳ないと思っちゃダメ」と言われています。保育園が悪い場所だと息子に思わせてはいけないので、保育園が楽しい場所だと思えるように、「きょう保育園だよ。ごめんね」というワードは絶対に使わないようにしようと共有しています。今、息子は保育園が大好きです。

 

PROFILE 久冨慶子さん

2012年にテレビ朝日へ入社し、「おかずのクッキング」や「やべっちF.C.」、「グッド!モーニング」などを担当する人気アナウンサーに。2018年にサッカー元日本代表・大津祐樹選手と結婚し、2021年2月、男の子を出産した。大津選手のジュビロ磐田移籍に伴って静岡県へ移住し、現在は新幹線通勤をしている。

 

取材・文/長田莉沙 画像提供/久冨慶子 ※記事は2023年11月に取材したものです。