日本のお菓子を海外向けにサブスクで届けるサービス「Tokyo Treat」。急成長するこの事業で注目を集める株式会社ICHIGOの代表取締役CEO・近本あゆみさんは、今からは想像できないくらい、中高時代は不良で落ちこぼれのギャルだったと語ります。

 

創業時のメンバーと
創業時のメンバーと

難関のお嬢様学校に入学も成績に絶望し不良の道へ

── 近本さんが通われていた学校は難関校としても有名ですよね。せっかく入れたのに何があったのでしょうか?

 

近本さん:中学受験して入学できたのですが、初めての中間テストで80点を取ったんです。小学校時代は優等生で95点以下を取ったことがなかった私にとっては衝撃的な出来事で(笑)。つねに“できる子”側にいた自分ができない子だったとショックを受けて、そこから極端ですが「1番になれないなら勉強しなくてもいいや」という考えに至り。いっさい勉強しなくなったんです。

 

── 80点も取れてるのに?と思ってしまいます。中1にして勉強放棄したときは、ご両親も驚かれたのではないでしょうか?

 

近本さん:本当に、せっかく難関校に入ったのに勉強はしないし「どうしてうちの子だけ?」と思ったと思います。いい子が多い学校で、学年でひとり不良になりましたから(笑)。当時、流行りのガングロでしたし、見た目はまさにギャルでした。学校をおろそかにして池袋や渋谷にばかり行くようになり、両親はとても心配していたと思います。

 

── ほかの同級生とは違う学生時代を過ごしたかと思いますが、ご自身としては学校では学べないような人生経験や勉強になったこともあったのでしょうか?

 

近本さん:それはありますね。優等生だけの環境では見えない世界も見てきたと思います。学校の外でいろいろな人たちと出会い、さまざまな物の見方があることも知り、今雇用する立場として人を見るときや、あらゆるお客様を相手にするときにさまざまな角度から接することができるのは、このころの経験が役に立っているかもしれません。

 

ちょっぴりガングロメイクの近本さん
ちょっぴりガングロメイクの近本さん

── そんな学生生活を過ごしてきた近本さんですが、入学6年目の高校3年生のときに更生し、大学進学を決意されます。決断の背景には何があったのでしょう?

 

近本さん:学校の先生が大学に行くことを強く勧めてくれたんです。「大学は好きなことを学べるし、新しい世界が見えてくると思うよ」と言ってくれた恩師の言葉がとても刺さりました。急に受験したいと言ったとき、勉強面や成績面ではかなり出遅れていたけれど、友達も応援してくれて。親もこころよく背中を押してくれ、6年目にしてようやくまともに勉強を始めました。

 

── 手がかかる子ほどかわいいという言葉もありますが…今、活躍なさっている近本さんの姿を見て先生も嬉しいでしょうね。

 

近本さん:本当にいい先生に恵まれました。学校では浮いた存在でしたが、退学しろと言われたことはありませんでした。問題児だった私にあきらめずに寄り添ってくれた先生のおかげで今があります。反抗する私を説得して未来の新しい世界への興味を持たせてくれた先生たちには感謝しかありません。

 

ちょうど最近、同窓会があって、そのころの恩師にお会いしました。私がテレビや新聞で取り上げられて仕事を頑張っている様子を見たと、とても喜んでくださって。私もそういう形で恩返しできていたことを知り、とても嬉しかったです。

 

インタビューに応える近本さん
インタビューに応える近本さん

親からつけてもらった忍耐力が財産に

── 現在はCEOとして働きながら4歳と2歳のお子さんを育てるママでもいらっしゃいます。お仕事との両立など大変ではありませんか?

 

近本さん:子どもが生まれる前は全部、自分の時間だったので、納得いくまで仕事ができていました。今は子どもがいるので朝早く起きないといけないし、お弁当も作らないといけないしと、生活は変わりました。

 

仕事と子育てを両立させるためにも限られた時間で仕事ができるようメリハリのある働き方にシフトしていきました。これまでは仕事も自分でやったほうが早いと考えていた部分もあって、人まかせにすることができず、多くを抱えがちだったのですが、今はマニュアル化をして人にまかせられるように。物理的にもようやく回せるようになり、両立できる働き方が今はできていますね。

 

日々のルーティン業務は社員にまかせ、自分は新規事業やPRなど組織を発展させることに時間を使えるような、いい形になったと思います。

 

センター中央が近本さん。会社は急成長し、現在は多くのメンバーを率いるリーダーとして活躍している
センター中央が近本さん。会社は急成長し、現在は多くのメンバーを率いるリーダーとして活躍している

── いろいろな経験をされてきた近本さんですが、子育てをするなかで大切にしていきたいと思っていることはありますか?

 

近本さん:私が高校3年生から勉強に本格的に打ち込んだとき、集中できたのは両親が小さいころから勉強や習い事に対する忍耐力を身につけてくれたからだと思うんです。小さいころの教育が財産になるということを身をもって経験しているので、小さいうちはある程度親が導いて、頑張るための忍耐力がつく経験をさせたいなと思っています。

 

子どもたちにはさまざまなことにおいて目標を達成するためには楽しいことばかりではなく我慢することも必要なんだということを学んでほしいですね。近年は、日本という国が生きにくくなったと感じることもあり、子どもがこれから世界で生き抜けるようなグローバルな力を身につけほしいという思いで、子育てに向き合っているところです。

 

PROFILE 近本あゆみさん

株式会社ICHIGO代表取締役 CEO。2児の母。日本の文化を世界へ発信するべく起業した、海外向けサブスクサービス「Tokyo Treat」「Sakuraco」等を運営。日本で話題のお菓子や和菓子をセレクトしBOXに詰め込んで、現在184か国の人々に届けている。

取材・文/加藤文惠 画像提供/近本あゆみ