男女問わず交友関係が幅広く、現在は30歳年下の女性とおつき合いしていると公言する井上順さん。「僕は好奇心のカタマリみたいな男だから」と話す76歳の井上さんに、歳の差恋愛やこれからのことについてお聞きしました。(全4回中の4回)
14年の結婚生活…最後に妻に言われた衝撃のひと言
── ハンサムでおしゃれで気づかいができて、ユーモアもある。若いころからおモテになったのでは?
井上さん:モテたかどうかは基準がわからないから何とも言えないけど、ありがたいことに女性が途切れるってことはなかったかな。
── それを「モテる」と言うんです(笑)。
井上さん:いやいや、ほとんどの方にご迷惑をかけたと思う。失礼なこともいっぱいしたし。女性に対しては懺悔しかないです。
僕、若いころに仕事で出会った女性(当時の人気モデル・青木エミさん)と一度結婚したんですね。14年続いたんですけど、別れ際に相手から言われたことがあるんです。「順さん、結婚してるあいだ、24時前に帰ってきたことが何回あるか知ってますか?」って。「そんなのいちいち数えてるわけないじゃない。あなた、数えてるの?」って聞いたら「ええ」「何回だい?」「1回」だって(笑)。これじゃあ別れるよね。僕だって嫌になるよ。
── 男女問わず、交友関係が広かったと聞いたことがあります。
井上さん:そうなんですよ(笑)。僕は好奇心のカタマリみたいな男だから、いつも新しいものを欲しがるんです。素直でしょ?それでも、もうちょっと落ち着いて、ふたりの時間を持ってあげられたらよかったんじゃないかという反省がある。相手には良い時間をいただいて感謝しています。
やり方も考え方も違う30歳年下の女性に惹かれて
── 現在もおつき合いしている女性がいると公表されていますね。
井上さん:いますよ、年齢は40ちょっと過ぎくらいかな。30歳以上年下です。僕は別に偉くもないし、ダメなところもあるし、目立つ仕事をしているだけなんです。それでも、人と出会う機会は多いので、ひと目で「あっ、こんな素敵な人がいたのか」と思うと、すぐに声をかけてしまうんですよ(笑)。
30歳の年の差があると、同じことをやってもやり方も考え方も違う。どちらが正しいかじゃなくて、「新しい息吹」を与えてもらってるの。例えばX(旧Twitter)のやり方にしても、僕は機械に弱いから「ちょっと家に来て教えてよ」ってお願いしています。
彼女はパソコンでもすごい速さで打てるけど、同世代だったら一緒に指1本でポチポチ、になっちゃう。そうやって「ひと味違う風」を毎日頂戴してる、っていうのかな。すごくありがたいです。立派な大人、人格者として見てますね。
── 敬意ある関係性で素敵ですね。
井上さん:Xに載せる料理を教えてもらうこともあります。知り合いから、ときどき旬の食材を頂戴するんですよ。そういうとき、「こんなもの作ってみたいんだけど」と伝えると、「何と何を揃えておいて」って返ってくるので用意しておく。それで、テレビ電話越しに教えてもらいながら作ります。
── いつも手料理が美味しそうだなと思っていました。料理は以前からされていたんですか?
井上さん:むかし、ちょっと料理を勉強したことがあるんです。ガールフレンドを家に呼んだとき振る舞うために。そういう下心があって料理を作ってたの(笑)。パスタは得意だね。ペペロンチーノみたいなシンプルなもの。青じそが隠し味で、イタリア人の友達も美味しいって言ってくれます。
これからは人生の「お返し」の時期
── 井上さんはずっと若々しい印象のままですが、ご自身で変わっていないと思うところ、変化を感じるところはありますか?
井上さん:僕はやっぱり、ショーが大好きなんです。ひとりでステージやディナーショーをやるようになり、歌だけじゃなくタップやダンスを取り入れたりして、お客さんに「日本じゃないみたい」って思ってもらえるような新しいものを作りたいと、いつも先に進むことを考えてきました。だんだん世の中が変わってきて、ショーを求める人が少なくなっていったけれど、僕は今も同じ思いで続けています。
変化を感じるのは、身体の動きが悪くなったことかな(笑)。これはしょうがないよね。失ったものがある代わりに、フィーリングを重視するところから、ひとつひとつのことに対して深い思いを感じるようになりました。
── 井上さんのお話を聞いていると、自然と笑顔になるし、勇気が湧いてきます。
井上さん:僕も皆さんから笑顔と勇気をもらってますよ。近所の小学生からも、もらっている。朝起きて窓から外を眺めていると、登校のランドセル組がわーっと走っていくわけですよ。体の3分の1くらいある大きなランドセルを背負ってね。それを見てるだけで「おお~、頑張れ頑張れ」って笑顔になる。「いっぱい遊びなさいよ。勉強しなさいよ」ってエールを送ってると、なんだか元気が湧いてくるんだよね。
── そんなふうに感じられることが素敵です。
井上さん:僕は今は「お返しの時期」に入ってると思ってるの。何もない自分がこの世界に入って何十年もやらせてもらって、たくさんの貴重な経験をさせていただいた。それをお返ししていく時期が来たのかなって。そのつもりで毎日仕事に向かったり、人と接しています。総体的に幸せな人間なんですよね、自分で言うのも何なんだけど(笑)。
PROFILE 井上順さん
1947年東京都渋谷区生まれ・在住。16歳でザ・スパイダースのボーカルとしてデビュー。軽妙で気さくな個性を活かし、歌、芝居、司会、舞台など多方面で活躍。2020年1月、渋谷区名誉区民に顕彰。同年4月に開設したX(旧Twitter)が幅広い層から人気を得ている。著書に『グッモー』(PARCO出版)がある。
取材・文/原田早知 写真提供/井上順