小学5年生のときに『ふたりっ子』に出演した三倉佳奈さん。ドラマを機に一気に知名度が上がりますが、浮き沈みの激しい世界で活躍が続いたのは、ある人の言葉があったからだと言います。(全5回中の1回)

5歳でデビューも「このまま芸能活動を続けるのか」

── 5歳でデビューされました。改めて、芸能界に入ったきっかけについて教えてください。

 

三倉さん:双子で街を歩いていると、それだけ目立つというか、周りの方が可愛いねって言ってくださることがよくあったんです。なかには「テレビに出たらいいのに」とおしゃってくださる方もいて、母が軽い気持ちで劇団に応募したのが始まりです。

 

── 三倉さんの知名度が全国区になったのは、小学5年生のときに出演された、『ふたりっ子』あたりからでしょうか。

 

三倉さん:はい。そこから三倉茉奈・佳奈の名前が一気に広がって、ドラマや舞台、CM、バラエティとたくさん出させていただけるようになりました。『踊る!さんまご殿!!』に出たときは、さんまさんが私たちの「ハモリ」をフィーチャーしてくださって、周りの皆さんが喜んでくださるのが嬉しかったです!

 

小・中学生の頃はただただお仕事が楽しかったです。課外授業のような気持ちで、特に緊張もしていなかったと思います。

 

── 街で声を掛けられることはありましたか。

 

三倉さん:常に見られている感じはありました。声を掛けていただくのは嬉しいです。でも、当時大阪に住んでいて、仕事が終わって電車でウトウトしているときに、関西のおばさまから「マナカナちゃんやな…?」と、座席の下からグイッと見上げて声をかけられたときは、「はい、ありがたいけれど、寝かしてください…」と思ったことはありました(笑)。

 

あと温泉に行ったとき。私、お風呂大好きなんですけど、脱衣所で服を着て、さぁ、部屋に戻ろうと思ったときに「応援してます!」と言われたことがあって。この人はいつから気づいてたんだろうとか、湯船に浸かってるときから見られていたのか?と、ちょっと驚いたこともあります(笑)。

 

── 気が抜けませんね。学校のお友達との関係はいかがでしたか?

 

三倉さん:小学生の頃は、ただテレビに出ている人というだけで、特に目立つこともなかったです。学校にテレビがついていて、昼休みになると『ふたりっ子』の再放送をクラスで観ていましたが、みんなに観てもらえて誇らしいような、嬉しいような気持ちだったのは覚えています。

 

でも、中学・高校生になると少しずつ変わっていきました。「マナカナどこや?」と教室まで見に来る人がいたり、廊下を歩いていると明らかに視線を感じたり。大学生になるとさらに目立ってしまって、新しい学校、新しい環境に行くと、はじめはだいたい騒がれました。つらいと思うほどではなかったけれど、毎回視線を感じながらスタートする感じでしたね。

 

三倉茉奈さん(右)佳奈さん(左)
三倉茉奈さん(右)佳奈さん(左)朝ドラ「だんだん」ヒロインにて

── 子どもの頃から芸能活動をされていますが、他の道を考えたことはありますか?

 

三倉さん:大学3年生のとき、周りが就活を始めた頃に少しハッとしたことはあります。私はこのままお仕事を続けていく気持ちがあるのか。この先もお仕事をいただけるのだろうかと。でも、大学4年生になって朝ドラ『だんだん』のヒロインのお話をいただいたんです。このタイミングで朝ドラのオファーをいただけたというのは、神様がこのお仕事を続けなさいという意味かもしれない。そう思いながら徐々に迷いが消えていきました。 

子役のイメージを脱却できない葛藤も

三倉佳奈さん
今では小学3年と1年のお母さんになった三倉佳奈さん

── ところで、子役から大人になっていく段階で、悩みや葛藤はありましたか?

 

三倉さん:子役から脱却できてないな、と感じたことはありました。特に高校、大学生くらい。子どもから大人に成長する過程で、一番中途半端な時期というんでしょうか。自分としては、もっと大人っぽく見せたいし、もっとシリアスな役もやってみたい。でも、求められるのは「満面の笑み」とか「元気いっぱい!」みたいなものがほとんどでした。当時の子役は通る道かもしれませんが、自分の見せ方、在り方に葛藤を抱いた時期はありました。

 

それでも、いただいたお仕事に一つひとつ向き合っているうちに、自分の気持ちも、求められるお仕事も徐々にマッチしていったように思います。

 

── 浮き沈みの激しい世界ですが、途中で気持ちが不安定になったり、いわゆる道を外したくなるようなことは、なかったでしょうか…?

 

三倉さん:『ふたりっ子』の演出の方に、「僕はいろいろな子どもたちを見てきたから、茉奈・佳奈には真っ直ぐ育って欲しい」と、もう何十万回も言われてきました。番組が終わった後もどこかで会うたびに「ちゃんと学校行ってるか」「友達作ってるか」と、ずっと気に掛けてくださったんです。

 

あと、舞台で共演させていただいた先輩方の影響もあったと思います。皆さんいつも礼儀正しくて、努力家の方が多かったです。一つひとつの現場を大切にされている姿を見て、自然と影響されていたのかもしれません。

 

── 素敵な先輩方が近くにいらっしゃったのですね。

 

三倉さん:皆さんが頑張る姿を見て、自分ももっと頑張ろう。もっといい演技ができるように頑張ろうって、その積み重ねで今に至ります。今もそうです。子役から数えると芸歴こそ長いですが、余裕を持って望むというより、いつも必死です。あぁ、今日も無事終わった。今日もなんとかできたと思いながら、進んでいます。

 

PROFILE 三倉佳奈さん

1986年2月23日生まれ、大阪府出身。1996年、NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』で双子の姉・茉奈とデビュー。テレビや舞台など多方面で活躍。オフィシャルYouTubeチャンネル「マナカナんち」更新中。「Family Dream Live2023」が12月17日まで公演中。

取材・文/松永怜 写真提供/三倉佳奈