テレビ番組「みいつけた!」でサボさん役を担う俳優の佐藤貴史さん。舞台やドラマなどに出演する実力派ですが、高校生の頃は教員を目指していたそうです。(全3回中の2回)

金八先生に憧れ教員を目指していた高校時代

── 高校生の頃は教員になりたかったそうですね。

 

佐藤さん:教員を目指した理由は、中学生の頃にお世話になった先生に憧れたから。当時はドラマ「3年B組金八先生」が流行っていて、僕もめちゃくちゃ好きだったんです。夢を打ち明けたら、両親も応援してくれました。でも勉強は嫌いで、同級生と近所のゲームセンターに入り浸っていましたね。

 

「国立大学を目指して」と両親から言われていたんですが、センター試験で失敗しました。前の席にいた受験生の香水の香りにあてられて、緊張も相まって問題が解けなかったんです。模擬試験で650点を下回ったことはなかったんですが、自己採点の結果は400点くらい。それで国立大学は難しくなってしまいました。

 

その後、友達と一緒に私立大学を受験するんですけど、僕だけ落ちて。「これはやばい!」と焦っていたら、卒業式の次の日に受けられる大学を母が見つけてくれて、小論文と英語の試験を突破して埼玉県にある駿河台大学に入学できました。

 

── そこで教員免許を取られたのでしょうか?

 

佐藤さん:いや、教職課程は取らなかったんですよね。

 

── え!?

 

佐藤さん:男子校出身だから、女子がいるキャンパスライフが輝いて見えたんです。それで浮かれて、バイトに明け暮れる毎日でした(笑)。

 

「当時は金八先生に憧れていた」高校時代の佐藤さん

「芸人いけるわ」就職活動はせずにお笑いの道へ

── 卒業後は就職されたんですか?

 

佐藤さん:キャンパスライフを送るうちに「将来は表現活動をしたい」と考えるようになっていました。テレビで大喜利の番組を観ていたときに、ダウンタウンの松本人志さんと答えが同じだったことがあるんです。それで「お笑い芸人いけるわ」って勘違いして(笑)。就職活動はせずにお笑い芸人を目指しました。

 

当時あった『じゃマール』(個人による告知を掲載した雑誌)の相方募集ページで見つけた、2つ年下の子と「あいあい傘」というコンビを結成しました。

 

それからは、素人が出るライブでネタを磨いて、事務所に応募する日々。最初に連絡した事務所からは返事が来ませんでしたが、2番目に応募した事務所はネタを見てくれて、受かったんです。週に1度、事務所で新ネタを見てもらう生活が始まりました。

 

── お笑い芸人から俳優に転向されたのには、どういう経緯があるのでしょうか?

 

佐藤さん:結成して2年で相方とケンカ別れしたんです。大喜利のライブで、僕は出場前にお題を見て披露するネタを考えたのですが、本番ではウケなかった。そうしたら相方が「問題をカンニングして、しかも本番でスベるなんて素人以下だ」と言ってきたんです。そこですごいケンカになりました。

 

あれは人生初の大きな悲しみでしたね。お笑いってコンビでやるイメージがあったから、そこからどうしたらいいかわからなくなって、毎日パチンコに明け暮れるようになりました。

 

でも、どうにかこの生活から抜け出したい。ケンカ別れしたときに「役者に向いてるんじゃないか」と相方から言われたのを思い出して、目指すようになりました。

劇団員になったものの怒られる日々が続いて

── 具体的にはどのように俳優を目指しましたか。

 

佐藤さん:バイト先にサブカル好きな人がいて、小劇場を教えてもらいました。それで劇団「サモ・アリナンズ」の芝居を観に行ったらすごく面白くて、まったく知らない俳優さんたちなのにゲラゲラ笑ったんです。ここなら面白いことができそうだと、その劇団のワークショップに参加して、次の公演から準劇団員として参加するようになりました。最初の役は村人と馬の後ろ足役でしたね。

 

── ついに俳優人生のスタートですね。

 

佐藤さん:でもね、稽古で怒られる日々が続くんです。お笑い芸人がダメだったからあとがないと思っているので、余計辛くて。3年目に、いよいよ体も心も動かなくなったのでこれは無理だと劇団を辞める決意をしました。ところが座長の小松和重さんに、「演出の倉森(勝利)は、佐藤は劇団に必要な役者だと言っている」と聞かされて。

 

それまで思いもしなかった倉森さんの本心が知れてすごく嬉しくて、もう少し頑張ってみようと踏みとどまることができました。

 

そのうち別の劇団にも客演として呼ばれることが増えていき、サボさん役にも繋がっていきました。

 

劇団員時代の佐藤さん

「うちの貴史よ」周りに自慢している両親

── ご両親は、教員からお笑い芸人、俳優と夢が変わることに対して、どんな反応でしたか。


佐藤さん:大学で教職課程を取らなかったのを見て、両親は「公務員になるだろう」と思っていたみたいです。だからお笑い芸人を目指したときは、めちゃくちゃ反対されました。一応、親の顔を立てるために公務員試験も受けたんですけど、問題が難しくて普通に落ちましたね(笑)。「やりたいことをやらせてほしい」と説得し、その後お笑い芸人として事務所に所属したというのが大きかったのか、最終的には何も言われなくなりました。

 

スラリとしたスタイルがそっくり!旅先で両親と

最近はテレビ番組「みいつけた!」を毎日見ては、「うちの貴史よ」と周りに言ってるみたいです。欲が出てきたのか、「貴史の顔が出る仕事が見たい」なんて言うことも。だからドラマに出演するととても喜んでくれます。

 

PROFILE 佐藤貴史さん

1974年12月17日生まれ、栃木県出身。2000年から劇団「サモ・アリナンズ」に参加する。テレビではEテレ「みいつけた!」でサボさん役としてレギュラー出演するほか、ドラマや舞台、映画などに出演する。資格をとるほどサウナにハマり中。

 

取材・文/ゆきどっぐ 画像提供/佐藤貴史