温泉旅行の最中、がんの疑いがあると夫から言われた、はんにゃの妻・川島菜月さん。第一子を妊娠中、プロポーズを待っていた瞬間でした。(全5回中の1回)

付き合いから1か月後に父に会いに

── 夫の川島章良さんとの出会いについて教えてください。

 

川島さん:友達の紹介で彼と出会いました。その後、何度か彼から誘いの連絡がありましたが、芸人さんはチャラいイメージがあったのでずっと断っていたんです。周りの人たちが「あきちゃんはいいやつだよ」と後押ししてくれて二人で会うことにしました。

 

── そこからどのように気持ちが変わっていったのでしょうか?

 

川島さん:初めてのデートの時、待ち合わせに私が1時間半ほど遅れてしまったんです。それでも彼は大雨の中、ずっと外で待っていてくれたり、LINEで毎日のようにマメに連絡をくれたりして。彼にだんだんと惹かれていきました。

 

彼と正式に付き合うことになってから1か月後。彼は私との将来について真剣に考えているから、私の父に挨拶したいと言ってくれて、大阪から実家の岡山まで父に会いに行くことになったんです。

 

── お父さんの反応は?

 

川島さん:つき合うこと自体はいいけど、芸人さんだし大変だよと言われました。ただ、彼自身にはいい印象を持ってくれたようでした。私は当時24歳でしたが、彼の真剣な表情を見て結婚も現実的に考えるように。子どもができてもいいかなと思っていたら、妊娠がわかりました。しかし、このまま幸せに結婚していくのかと思った矢先、彼のがんが発覚したんです。

プロポーズ直前にがんの疑いが

はんにゃ川島さん夫妻、婚姻届けを提出した日

── どういったタイミングで旦那さんのがんを知ったのでしょうか?

 

川島さん:彼と二人で温泉旅行に行ったときです。当初、子どもを妊娠したものの正式に結婚の話をしていなかったので、彼は旅行中にサプライズでプロポーズをしてくれる予定だったそうです。でも、私が温泉に入って彼が部屋でひとりで待っていたときに、前に受けた健康診断の結果について病院から連絡がきて、「がんの疑いがある」と言われたみたいで。

 

私が部屋に戻ってくると、彼がすごく青い顔をしていました。様子を伺ったら「腎臓がんの疑いがあると言われた」と。

 

── 旦那さんのお話を聞いて、川島さんはどう思いましたか?

 

川島さん:やっぱり驚きました。でも、かなり初期の段階だったし、私の周りにがんになった人も何人かいましたが、みんな回復して元気に過ごしている様子も見ていたので、きっと大丈夫だろうと思いました。彼には、妊娠を機に健康診断を受けてがんがわかったし、子どもが見つけてくれたと考えようよと伝えました。その日は、がんの報告と共にプロポーズもしてくれて、二人で頑張っていくことになりました。

 

── 旦那さんの入院中もずっと寄り添っていたそうですね。

 

川島さん:手術もあったので2週間の入院でしたが、毎朝6時に起きてお弁当を作ってから病院に行き、日中はほとんど病院で過ごしました。面会時間の終わりと共に帰宅し、持ち帰った彼の洗濯ものを洗ったり、翌日の準備をしたり。寝るのは毎日深夜0時過ぎ。それでも、今まで彼が仕事で忙しかったので、二人でこんなに一緒にいられたことがほぼ初めてだったんです。つい長居してしまいました。

 

ただ、私も妊娠中でしたし、体の負担もあったと思います。微熱が出てゆっくりした日もありましたが、体調が戻り次第病院に通っていました。

 

── 旦那さんは、どのタイミングで世間にがんになったことを公表したのでしょうか?

 

川島さん:手術して1年以上たってからですね。芸人という仕事もあるし、がんになってかわいそうと思われたくなかったのかもしれません。一方で、芸人はなんでもネタになるからと思ったようで、公表することになったようです。

 

世間にがんの公表をするときも、特に夫から相談はなかったです。基本的に夫が仕事について私に相談することはほとんどなく、自分で決めた結果を私に伝えることが多いですね。

気になるときはすぐに病院へ

入院中のはんにゃ川島さん

 

── 旦那さんががんになってから、なにか変化はありましたか?

 

川島さん:以前にも増して仕事への意欲が増したようです。術後はリハビリで歩いて体力をつけたり、復帰に向けて前向きに取り組んでいました。がんになってしばらくは、将来への不安を口にすることもありましたが、周りから励ましの声を掛けてもらいながら、徐々に体が回復していくと、がんに関する講演会もするようになって仕事の幅も広がっていったようです。

 

── 夫婦関係は変化しましたか?

 

川島さん:とくに変わりはなかったです。よく病気を乗り越えて絆が深まったという家庭もありますが、うちの場合は手術も数時間で終わり、症状も比較的軽かったので、そこまで大きな変化はなかったです。ただ、初期の段階でがんが見つかったことで、改めて体の不調など、気になるところがあればすぐに病院に行くようになったのは良かったなと思います。

 

PROFILE 川島菜月さん

岡山出身。お笑いコンビ「はんにゃ」川島章良の妻。現在、娘と息子の育児をしながらアメブロ「川島菜月のオフィシャルブログ」で家事や育児について発信中。

 

取材・文/間野由利子