外食やお菓子・加工食品を完全に避けるのは難しいでしょう。しかも、どれも塩分を多く含みます。塩分過多を避けるには、塩分を排出する食べ物をとること。何を食べればいい?医師の工藤あきさんに聞きました。

 

「いくつ知っている?」塩分の吸収を防ぎ、排出を促す身近な食べ物8選

塩分を摂りすぎると「むくみ、乾燥肌、シワ」にも!

── 体が重だるかったり、夕方になると靴がきつくなったりと、むくみが気になります。夏は暑いからといって、水分の摂りすぎはよくないのでしょうか?

 

工藤先生:夏は熱中症の危険もありますし、むしろ積極的にこまめな水分補給をしたほうがいいです。むくみが気になる人は、水分量よりも「塩分」を摂りすぎていないか、振り返ってみましょう。

 

むくみとは、体に余分な水分がたまった状態です。通常、体内の水分は一定になるように調整されるので、水を飲みすぎたとしても、汗や尿になって排出されます。

 

── 水分を多めにとったとしても、それだけでむくむ可能性は低いのですね。

 

工藤先生:本来は排出されるはずの水分ですが、排出するのを妨げるのが塩分です。人間の体は、大人の場合、体重の0.3〜0.4%の塩分を保持するようにできています。そのため、塩分を摂りすぎると、体内が血液中の塩分濃度を下げようとして、水分をため込もうとすることでむくんでしまうのです。

 

また、皮膚の細胞からも水分が奪われていくため、肌の乾燥やシワの原因にもなります。塩分の摂りすぎは、高血圧や心臓・腎臓の病気、胃がんなどのリスクも高くなることは知られていますが、むくみやシワなどにまで関係しているのです。

加工食品やクッキーに潜む “隠れ塩分”に注意

── 塩分の摂取量は、どれくらいにすればいいのでしょうか?

 

工藤先生:厚生労働省では、日本人の1日あたりの摂取目標量(食塩相当量として)は、成人男性では7.5g未満、女性では6.5g未満としています(※1)。医師の立場としては、高血圧の予防・治療のためには、男女ともに6g未満におさめるよう指導しています。

 

そのいっぽうで、実際に食塩を摂取している量はどれくらいだと思いますか?日本人の1日あたりの平均摂取量(食塩相当量)は、成人男性が約11g、女性が9g程度(※2)。つまり、男女ともに現状から約3〜4割程度は塩分をカットする必要があることを示します。

 

── まだまだ目標には遠いですね。どうすれば効果的に減塩ができるでしょうか?

 

工藤先生:塩やしょうゆをかけすぎないようにするのはもちろんですが、現代の食生活では、食材や加工食品、クッキーなどのお菓子に含まれる“見えない塩”の摂りすぎには要注意です。

 

味を濃くしておいしく感じやすくしたり、保存性を高くするために、外食の料理や加工食品にも、塩分が多めに加えてあります。例えば、カップ麺ひとつで食塩相当量5g以上含まれているものも。最近は減塩タイプの商品も増えているので、積極的に選ぶように心がけてください。

 

また、お酒を飲むときは、ついつい塩辛いおつまみを食べてしまいがち。翌日に顔がむくんでしまわないように気をつけましょう。つまみに選ぶなら、枝豆やサラダ、冷奴などあっさりしたメニューが比較的おすすめです。

塩分を排出する「カリウム」を豊富に含む食べ物とは

工藤先生:塩分の摂りすぎを控えるのと同時に、摂りすぎた塩分を排出する方法もとり入れましょう。塩分の吸収を防ぎ、尿として排出してくれる働きをもつのが「カリウム」です。

 

── どんな食べ物にカリウムが多く含まれているのでしょうか?

 

工藤先生:じゃがいも、さつまいも、豆腐や納豆などの大豆類、ワカメ、アボカド、昆布、ほうれんそう、バナナなどです。

 

カリウムは煮たりゆでたりすると溶け出てしまうので、生で食べる、焼く、蒸す、あるいはスープにすると効果的に摂取できます。成人男性ならば1日あたり2500mg、女性ならば2000mgを目安にして摂るようにしてください(※2)。

 

ただし、腎機能が低下している人は、カリウムを摂りすぎると手足にしびれや脱力感、不整脈のもとになることもあるので注意が必要です。減塩と塩出し、2つの工夫で体内の塩分量を上手にコントロールしていきましょう。

 

PROFILE 工藤あきさん

消化器内科医・美腸・美肌研究科。一般内科医として地域医療に貢献する傍ら、腸活×菌活を活かした美肌・エイジングケアにも尽力。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。2児の母。

 

取材・文/大浦綾子 

(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 (※2)厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」