「先輩と交流できる機会があまりなかったので、お仕事の相談をできる人がいなくて…」とデビュー当時を振り返る小芝風花さん。ドラマや映画、CMで活躍し、『転職の魔王様』(カンテレ制作・フジテレビ系)では、ヒロイン・未谷千晴役を演じています。かつて抱えていた悩みや後輩と接する際に心掛けていること、人との距離感への意識など、お話を聞きました。

 

小芝風花さん
「デビュー当時は悩むことも多かった」ことなど、終始真摯にインタビューに応じる小芝風花さん

14歳で地元・大阪を離れて東京へ

── 中学2年生のときに、オーディションでグランプリを獲りデビュー。最初の頃は、慣れないことも多かったと思います。

 

小芝さん:14歳で芸能活動をするため、母と妹と3人で大阪から上京しました。家族以外はみんな知らない人で、事務所の方たちとも出会ったばかりですし、芸能界がどんな世界なのかもわからない。

 

元々、人見知りなこともあって相談できる人もいないし、最初のうちはとりあえず事務所の方に教えていただくことを守って、目の前のことに必死に取り組んでいるうち、どんどん月日が流れていって…という感じでしたね。

 

── その頃の小芝さんは、どんな悩みを抱えていたのでしょう?

 

小芝さん:最初から大きな役がもらえるわけじゃないですし、順風満帆とはいかないですよね。同年代の方の活躍を見て、悔しい思いをしたこともあります。

 

「自分は何をすれば、同じように活躍できるんだろう?」とか、「向いてないんじゃないか?」とか…。いろいろなことに対して、モヤモヤしたり、すごく悩んだりしていた時期が長かったです。

モヤモヤしていた当時の自分にかけたい言葉は

── 今の小芝さんが、当時の自分に声をかけられるとしたら、どんなことを言ってあげたいですか?

 

小芝さん:振り返ってみると、すべてがちゃんと必要な経験だったと感じています。だから「今、している努力とか、頑張っていることを絶対に見ていてくれる人がいて、ゆくゆくは『君とお仕事がしたい』と言ってくれる人が、出てきてくれるんだよ」と、言ってあげたいですね。

 

一度お仕事をご一緒した方が、「次はこの役で見てみたくて」や「こんな役をやったら、面白いと思うよ」という感じで、2度3度と声をかけてくださる。20歳をすぎた頃から、そうした本当に嬉しいことが増えてきました。

 

「これでいいのかな?」と不安を覚えながらやっていたことを、ちゃんと見ていてくださった方がいて、いいと思っていてくれた…。少しずつですがそういうつながりが自信になって、今の自分があるんだと考えています。

 

小芝風花さん
透明感のある美しさと、親しみやすい愛らしさが同居しているのが魅力的

── 後輩の相談には、長文の返信をすることも少なくないそうですね。やはり自分が相談できずに、悩みを抱えていた経験があるからなのでしょうか?

 

小芝さん:そうですね。それに今、出演しているドラマの千晴役もそうですが、一生懸命な女の子の役柄が多かったり、見た目が幼かったりするけれど、実は26歳(笑)。周りに年下も増えたし、主演やヒロインを務めさせていただく機会から、自分のことだけじゃなく「周りを守らなきゃいけない立場」と感じることもあります。

 

あと私は部活の経験がないので、「先輩」と呼ばれると、めちゃくちゃテンションが上がるんです(笑)。

 

──「頼れる先輩」スイッチが入るわけですね(笑)。後輩と接する際に、意識していることはありますか?

 

小芝さん:話しかけやすい雰囲気をつくるように…というのは考えますね。フラットに「さんづけとか、しなくていいから!」と最初に言いますし、撮影が進んだ段階では「少し疲れたね。大丈夫?」「今日はちょっと、しんどいね」といった感じで、そのときの気持ちを言いやすいような話しかけ方を工夫するようにしています。

 

アドバイスを求められた際には、決めつけるようなことは言わない。「こうしたほうがいいよ」じゃなくて、「こういう方法もあるんじゃないかな」と選択肢を増やしてあげられたらという感じです。私だけの意見で偏るのはよくないと思うので、「私はこう思うけど、こういう考え方もあるし…」と自分の考えを話すときにも、ひとつの意見に限定しないよう心がけています。

距離感を汲みとるコミュニケーション

──『彼女はキレイだった』について紙谷楓監督と共演者の本多力さんが対談で、小芝さんの「受けの芝居の瞬発力」を絶賛していました。コミュニケーションで「会話がかみ合わない人がいる」ケースに悩む人もいますが、相手に合わせるコツはあるのでしょうか?

 

小芝さん:お芝居とコミュニケーションは違う部分もありますけど、相手との距離感はめちゃくちゃ探りますね。本当はすごく人見知りだけど、「初めまして」でも一緒に作品をつくる仲間になる方には、自分の人見知りを忘れるようにして(笑)、最初からいろいろ話しかけます。

 

話しかけたときの反応や質問への返し方から、「こちらから話したら、けっこう乗ってきてくれる方だな」「人との距離感を保って接したいタイプなのかな」といった傾向を見て、相手の方が不快にならない距離感で接するように気をつけます。

 

撮影が進んでからも「意外とイジったりしても、嫌な顔せずに楽しく返してくれる人だな」とか、「今はひとりで考えたい感じかな」といった感じで観察しながら、みんなが楽しく現場に向かえるように…というのは心がけますね。

 

小芝風花さん

── しっかり相手を観察して傾向を汲みとり、コミュニケーションされているんですね。

 

小芝さん:私はよくしゃべるほうだし、すぐゲラゲラ笑っちゃうタイプ。それを「明るくて楽しい」と感じてくださる方もいれば、「うるさい」と思う方もいるはずで、どう思われているかは自分じゃわからないですよね。

 

以前は“どう思われているか、わからない”ことを「難しい」「怖い」と感じていました。でもあるとき、「人が10人いたら、2人はあなたが何をやっても好きでいてくれる。2人は何をしても、あなたが嫌い。残りの6人は、あなたの行動や言うこと次第で好き嫌いが分かれる」という話をしてくださった方がいて…。

 

昔は「10人いたら、10人に好かれたい」と思って悩んだりもしたけど、それを聞いてから「全員に好きになってもらう必要はないんだ」と考えられるようになりました。

 

── 生理的に苦手とか、どうしても合わない、相性の悪い人っていますよね。

 

小芝さん:そうなんです。何をしても「嫌い」と思われたり、敵意を持ったりする相手に気を遣いすぎて自分が壊れるなら、無理をしないで距離を置けばいい。

 

それよりも好きでいてくれる人、自分の行動次第で私を好きになってくれる人のことを考えて、良い関係性を築く努力をすればいいんだな…って思えて、気持ちが楽になったんですよね。

 

PROFILE   小芝風花さん

1997年大阪府出身。女優として映画やドラマ、バラエティなど幅広く活躍。7月より『転職の魔王様』(カンテレ制作・フジテレビ系)に未谷千晴役で出演。12月より放送のNHK BS時代劇『あきない世傳金と銀』で主演を務める。2024年には主演映画『レディ加賀』公開予定。

 

取材・文・撮影/鍬田美穂