成田凌さんが毒舌敏腕キャリアアドバイザーの主人公・来栖嵐を演じ、転職業界の実態や知られざる裏側が垣間見えるドラマ『転職の魔王様』(カンテレ制作・フジテレビ系 毎週月曜日夜10時より放送)。

 

本作のヒロインで、ハードな労働環境で不調をきたし、働く自信と希望を失った迷える求職者・未谷千晴役を演じる小芝風花さんに、千晴のキャラクターや作品の魅力など、お話を聞きました。

 

小芝風花さん
ドラマ『転職の魔王様』で“迷える求職者”のヒロイン・未谷千晴を演じる小芝風花さん

「私がたりないせい」と思ってしまう

──『転職の魔王様』は転職業界が舞台です。知識としてしか知らなかった世界だと思いますが、転職エージェントやキャリアアドバイザー(以下、CA)の仕事について、どんな印象を持ちましたか?

 

小芝さん:転職は、その人の人生を大きく左右する大事なこと。そのサポートするって「すごく責任ある仕事だな」というのは、強く感じました。求職者の方の希望を叶えて、なおかつ企業からの要望にも応えないといけない。

 

「紹介するお仕事が合うのか?その会社で本当にやっていけるのか?」わからない部分もきっとあるなかで、精一杯できることをやらなきゃいけないし、向き合わないといけないことが多い、本当に責任重大なお仕事だと思います。

 

── 今回演じるのは、「未来が見えない不器用な“社畜”ヒロイン」で、“最恐毒舌”の魔王様なCAである主人公・来栖からは「気持ち悪い社畜」と評されてしまいます。そんな千晴は、どんなキャラクターですか?

 

小芝さん:すごくまっすぐで一生懸命な、真面目な女の子です。新卒入社した広告代理店がハードな労働環境で、上司の無理難題やパワハラをおかしいと思わず、「せっかく求められているのだから、応えなきゃ」と自分で自分を追い詰めた結果、体調を崩して3年たらずで退職することになります。

 

客観的に見たら「その環境がおかしい」し、「あなたは精一杯、やれることやっているよ」って状況なのに、気づけない。たぶん千晴と同じように、「もっと自分が頑張ればできるのに、私がたりないせいだ」と思ってしまう人は多いんじゃないかな…と感じますね。

自分の気持ちを溜めこむ千晴と重なる部分も

── 千晴がCAの来栖と出会うことで少しずつ変わっていくのも、ドラマの見どころかと思います。

 

小芝さん:来栖さんと出会って、千晴は気づいていなかった自分の本音と向き合うことになります。なんていうか「無理矢理、向き合わされる」(笑)。自分のなかで見たくなかった現実に直面させられるので、かなり苦しいし、キツイところもあります。

 

だけど来栖さんは鋭いというか、相手の心をえぐるようなことを言うけれど、本当に相手のことを考えているし、寄り添ってくれる人なんです。

 

千晴はそれまで、ちゃんと自分と向き合うきっかけもなかったし、「本当に自分がやりたいことって、何だろう?」と、立ち止まって考えられなかった人なので、すごくいい出会いなのだと思いますね。

 

小芝風花さん
千晴が悩みながら成長していく姿に共感する人が多いはず (C)カンテレ

── 千晴は多くの人に共感されるキャラクターだと感じますが、小芝さんご自身に重なる部分はありますか? 

 

小芝さん:今は少しずつ、自分の意見や考えていることを伝えるようしていますが、昔は本当に言えなくて…。「ちょっとこれは理不尽だな」とか、「これはおかしいな」と思うことがあっても、周囲の様子や反応を見ているだけになってしまうところがありました。

 

何も言わないまま、どんどん自分のなかに溜めこんで、いっぱいいっぱいになってしまう…みたいなことが、すごくあったんです。だから千晴が「自分がどう感じているのか」「自分はどうしたいのか」を考えずに、「周りはどう思うのか」「人からどう見られるのか」ばかりにとらわれてしまうのは、“めちゃめちゃわかる!”と思います。

 

「空気を読む」とか、「周囲の目を気にする」とかって、意識していないけど、いつの間にかそうなっていることが多いと思うし、千晴のそういうところは、多くの人にとっても共感できる部分かもしれませんよね。

できるだけストレスフリーでいられるように

── 制作発表会で「求められると、限界を超えて“頑張りたい”と思ってしまうところがある」と話す場面がありましたし、過去のインタビューでも「お仕事中は気を張っているけど、休日に疲れがドバッと出てしまうこともあった」といったコメントをされていて、そういう点にも千晴と重なる印象を持ちました。

 

小芝さん:このお仕事は求められることが、すごく嬉しいし、元気をもらえるので、やっぱり“頑張りたい”と思うし、求められたことには応えたいです。だからこそ第1話のなかで来栖さんから面と向かって「求められたら家畜のように、壊れるまで働き続けるのか?」と言われるシーンは、すごくグサッときました(笑)。

 

小芝風花さん

── “頑張りすぎちゃう”こともあるなかで、自分の状態と向き合うコツや、コンディションを保つためにしていることはありますか?

 

小芝さん:体力的な部分は「寝る」のが一番なので、移動中や撮影の合間など時間を見つけてとにかく寝る(笑)。あとはお風呂にきちんと浸かって、疲れを取る感じですね。自分の意見を伝えるようになったと言いましたが、以前は自分のなかに溜めこんでしまって、体力的なことだけじゃなく、精神的な疲れを溜めてしまう面が大きかったと思います。

 

もちろん「何でも口に出せばいい」ってものではないですし、「これは自分のワガママじゃないかな?」とか、「偏った意見じゃないか?」といったことは自分の気持ちと向き合って、きちんと整理します。そうして自分の意見を相手に伝える努力をするようになったのが、ここ2年くらいのこと。それからは“ちょっと生きやすくなった”というか、精神的な疲れを溜めこむようなことは、だいぶなくなりました。

 

疲労が溜まるのは身体だけじゃなくて、メンタルの要素もかなりあると思うんです。張りつめている気持ちを緩めて、抜くところは抜く。できるだけストレスフリーでいられるように、意識していますね。

 

PROFILE 小芝風花さん

1997年大阪府出身。女優として映画やドラマ、バラエティなど幅広く活躍。7月より『転職の魔王様』(カンテレ制作・フジテレビ系)に未谷千晴役で出演。12月より放送のNHK BS時代劇『あきない世傳金と銀』で主演を務める。2024年には主演映画『レディ加賀』公開予定。

 

取材・文・撮影/鍬田美穂