夫がパワハラやセクハラで問題になっているとわかったら、妻としてはどうしたらいいのでしょう。夫を全面的に信頼するのか、みずから調べて真実を知るべきか。

 

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知人から急な電話「知らされた噂」に不快

4歳年上の夫と社内恋愛で結婚したアキナさん(39歳、仮名=以下同)。出産を機に退職、5歳と3歳の子どもがいます。彼女自身はその後、別の会社でパートとして働いています。

 

「つい先日、同期だった仲良しのマリから連絡があったんです。いつもはLINEなのに、その日は電話でした。少し世間話をしたあとで、『言っていいかどうかわからないけど、あなたの夫、社内でセクハラしてるって噂になって大変だよ』って。まさか、と言ったら詳しく教えてくれました」

 

どうやら夫の部下である女性が「飲み会の席で酔って触られた」と、会社のセクハラ相談窓口に訴えているとか。そもそも夫は彼女に必要以上に親切だったり、食事に誘ったりしていた噂もあるそうだと、マリさんは言っていました。

 

「真っ黒ってことなのねと私がため息をついたら、マリは『でも彼女は彼女で、男性にしなだれかかったりするタイプだから』と苦笑していました。でも、セクハラ窓口に相談したのは事実で、夫が彼女に不快なことをしたのも事実なんでしょう。夫はお酒に強くて酔ったことなどありません。『酔ったふりをして触れた程度のことはあったかもしれない』と、マリも言っていました」

 

酔ったふりをして触れるなんて卑怯だ、と。真偽のほどはわかりませんが、夫にそういう噂が立つだけでも不愉快でした。

真実はどこに?夫に思いきって聞いてみると…

「夫に、こんな噂を聞いたとも言えませんし、モヤモヤするばかりでした。私自身、かつて勤めていた会社だし、夫の結婚相手が私だということを覚えている人もたくさんいます。夫を人として恥ずかしいと思ったし、相手の女性の勘違いではないか?と夫を信じたい気持ちもありました。落ち着かない日々を送っていましたね」

 

夫が相談してくれればいいのですが、いつもと変わらない様子で日々を過ごしています。セクハラはともかく、夫には多少強引なところがあり、自分の思い通りにならないとイライラする面もあります。それが暴走するとセクハラになる可能性もあるのではないか?と、アキナさんは不安でした。

 

「1か月ほどたって、マリからまた連絡がありました。結局、証拠がなかったので夫に処分はなかったと。でも後味が悪い。ただ、マリはその飲み会以前に、『夫が部下の彼女に言い寄っているような状況を見たことがある』と言うんです。それだけではよくわからないし、単に何か注意をしていただけかもしれません。ただ、周りからそんなふうに見られている夫をどう考えればいいのか、悩みました」

 

結局、彼女はこのままでは自分がおかしくなりそうだと考え、夫にストレートに聞いてみることに。かつての同僚からこんな話を聞いたのだけど、と夫に言うと、夫の顔色が変わったそうです。

 

「『それは完全に誤解だよ。どうして彼女がそんなふうにオレを陥れようとしているのかわからない』と。あなたは彼女をどう思っていたのか、ふたりだけで社外で会ったことはあるのかと思わずいろいろ聞いたら、『尋問みたいなことしないで、オレを信じてよ』って。だからそれ以上、聞けなくなりました」

 

結婚して6年、自分ははたして何があっても夫を信頼できるのか、それだけの関係を築いているのか。夫の真意がわからなくなってきたアキナさんは、夫に対するみずからの気持ちも確認しているところ。このまま子どもを中心に日常生活を続けていくことはできるけれど、はたして「真実」を知らないままでいいのか。それも今後は考えていきたい、ときっぱりとした口調で話してくれました。

 

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里