セックスレスと不倫をテーマにしたドラマ『あなたがしてくれなくても』に、ハマる女性たちが多かったと言われています。家族では観られないからと、TVerやFODで観る人も続出。結婚3年目からこの問題に直面するレス夫婦もいるようです。

 

仕事の忙しさで心も体も離れてしまい…

「うちもレスなんですよ。結婚して4年、この2年はまったくナシ。結婚する前は、私は彼に本当に愛されていると思っていたし、結婚後もそう思っていた。なのに、いつの間にかふたりは違うほうを向いて歩いている。そんな気がするんです」

 

つねに心の奥に重いものを抱えている気がすると、アユミさん(34歳・仮名=以下同)は言います。共働きで彼はシフト制の勤務のため、休日も合わないことが多いそう。それでも以前は休みを合わせる努力をしたものでした。

 

「結婚当初は生活に慣れるのに精一杯、その後は仕事と家庭の両立で余裕がなく、私自身が落ち着いたのは結婚して1年以上たったころ。子どものことも考えなければと思っていたとき、上司から『きみならやれると思う』と言われ、あるプロジェクトの一員に選ばれました。1年以上の大仕事でしたが、楽しくてやりがいもあった。夫にはその間、申し訳ないと思っていたけど、『お互い、仕事が忙しいときはあるよ』と協力してくれました」

 

それでも夫は寂しかったのでしょう。ときどきアユミさんを求めてきました。もちろん彼女も愛している夫だから拒みませんでした。ただ、あまりの疲労に、その最中、眠り込んでしまったことがあるそうです。

 

「私が思っている以上に、夫はそのことにショックを受けたみたいです。プロジェクトが終わってから、私が夫を旅行に誘ったら『その気もないのに、ムリしなくていいよ』と言われました。そのときはどういうことかわからなかったんだけど…」

 

誤解を解かないまま、夫婦の間に小さな亀裂が生じていたのかもしれません。そしてこの2年間、ふたりはまったく肉体的接触がありません。

お互い断られた経験がトラウマになり進めない

子どもをもつなら早いほうがいいと、いま、アユミさんは焦っています。ただ、それ以前に「夫と心が行き交っていない」ことに大きな不安があるといいます。

 

「話し合おうとしても、夫はなんとなくその話題を避けています。あるとき、『このままでいいとは思えない』と言ったら、私が最中に眠った過去のことを非難されました。あのときはしかたがなかったのよと言いかけて、夫にとってはずっと胸に刺さっていたトゲのように痛みがあったんだとわかったんです」

 

ただ、アユミさんも旅行に誘ったとき、夫からあっさり断られたことが傷として残っていました。自分たちは相手を思いやっているつもりで、じつは些細なことでお互いを傷つけ合っていたんだとよくわかったそうです。

 

「それからも言い争いをしたりはしないけど、相手の心に踏み込んではいけないんですよね、お互いに。もう傷つけたくないと思うからこそ、夫も私も肝心なところですっと引いてしまう」

 

アユミさんは、性的な関係さえあればすべてうまくいくわけではないと実感しているそう。体の関係がなくなったから心が離れたのか、心が離れたから体の関係がなくなったのか、そして自分たちは、本当はどうしたいのか。何もかもわからなくなり、ふたりとも仕事に逃げていると彼女は分析しています。

 

「嫌いになっているわけではないのに、何かがすれ違っている。少し離れて冷静になったほうがいいのかもしれないけど、離れたらそのままもっと気持ちが遠くなるようで怖い。姉に相談したら、『家族はこうあるべきと、あまり型にはまって考えないほうがいい。お互いの気持ちを正直に話し合うしかないと思う』と言われました」

 

そろそろ夏休みの計画を立てたいと考えているアユミさん。夫と休みを合わせ、リラックスした場所で一度ゆっくり話そうと提案することに決めたそうです。


文/亀山早苗 イラスト/前山三都里