芸人、女優、ボクシング、画家。あらゆるジャンルで活躍の幅が広がる南海キャンディーズの山崎静代さん。なぜ、そこまで多彩なのだろうか。(全3回中の3回)

お笑いと女優の共通点

── 山崎さんはお笑い芸人はもちろん女優としても高く評価されています。お笑いと演技に関して、ご自身のなかで共通点はありますか?

 

山崎さん:う~ん、どうでしょう。私は上手にスイッチを切り替えられるような性格ではないので、思ったことをそのまま表現している感じですね。でも、芸人さんって、お芝居が上手な人が多いですよね。コントとかで役になりきることがあるので、そこが共通点なんじゃないですかね。

 

── 山崎さんは進路を決める際、最初は女優を目指して劇団ひまわりに入団されました。その後、お笑いに目覚めて芸人になりましたが、結果的には女優という最初の夢を叶えた形になりましたね。

 

山崎さん:「お笑いは女優になるためのステップでしょ?」とたまに聞かれることがありますが、そういう気持ちはいっさいないです。今、女優業をやらせてもらうことは、もちろん楽しいですよ。でもそれは、土台にお笑いがあるから。むしろ、ベースが芸人だからこそ、女優の仕事をいただけていると思っているので。

リングの上に立つとスイッチが…

ボクシングのチャレンジマッチにて戦う山崎静代さんの強烈な左

── 山崎さんはボクシングでも活躍をされていて、オリンピックを目指していました。そもそも、どういう経緯でボクシングを始めたんですか?

 

山崎さん:ボクシングはとくに好きなスポーツではなかったんですが、たまたま私の周りにボクシング好きオジサンが多くて、その影響で興味を持ったんです。こう見えても私は女の子なので、グーで人を殴る経験なんてありません。「人を殴る感覚ってどんなんやろう?」っていうのが、初めたキッカケですね。それに、昔から『あしたのジョー』とかが好きで読んでいたので、格好いいと思っていたんですよね。やっぱり、好奇心と憧れからのスタートだと思います。

 

── ボクシングは殴り合うため、なかなかチャレンジできないと思う人もいるかもしれませんが、それについてどう思いますか?

 

山崎さん:これは人それぞれやと思いますが、いいパンチを当てたときは、すごく楽しいんですね。なんでしょう、あの感覚は…。もちろん、リングの外であったら人は殴りませんが、リングの上の競技という状態になるとスイッチが入るんですよね。そしたら、「絶対に倒してやるぞ!」って気持ちになるんですよね、不思議と…。

 

── 山崎さんは芸人、女優、ボクシングといろんなものにチャレンジをして、結果を出しています。

 

山崎さん:女優もそうやし、ボクシングもそうなんですけど、出会ったものに影響を受けているだけなんですよ。そのときは、仕事の方向性がズレていくなんてことはいっさい思っていなくて、目の前のもの、やりたいという気持ちに焦点を合わせる。そういういろんな出会いに運命を感じてすぐに動いちゃうんですよね。

物心がついたときから絵を描いていた

「これは目を奪われる」山崎静代さんが描いた作品は「ギ・ン・ザ」

── 山崎さんは絵画もやっています。2023年には銀座で初の個展が開催されました。どういうときに絵を描く衝動がわいてくるのですか?

 

山崎さん:私は、追い込まれないと手が動かないことが多いですね。それ以外だと、美術館に足を運んだり、印象的な絵を観たり、そういうインプットがあったときは「私も描きたい」ってなりますね。心がすごく動かされたときは、急に描きたくなりますね。

 

── いつから絵を描き始めたのですか?
 

山崎さん:物心がつくころから絵は描いています。最初は鉛筆で、短大生のときに絵の具を使うことが日常的になって、当時は頻繁に描いてましたね。でも、お笑いの仕事がだんだん忙しくなって、絵からは離れました。そして、2005年か2006年のときだったか、番組の企画で大きな絵を描いたんですが、そのときに、アクリル絵の具を買い集めたんですよ。番組は無事に終わったんですが、画材もあるので、せっかくやからってもう一度続きを描きだしたんです。

 

── 絵を描いているときは、どういうことを考えているんですか?

 

山崎さん:描き始めるときは、なんとなくで始めるんですが、描き進めていくと「ここがおもろいな」っていう部分が見つかってくるんですよ。それがあるとすっごく楽しい。絵に集中をしたら時間を忘れてずっと描いていられますね。そのときの感情は無ですね。もちろん、最後まで見つからないまま終わる可能性もありますが、最初はつまらなくても、あとで楽しくなる瞬間があるってことを知っているので、そこに向かって進みますね。

 

── 絵を描くことで気づくことってありますか?

 

山崎さん:個展を観てくださったいろんな方から「描いたときの心境が伝わってくる」って意見をいただいたんですよ。今までの絵を並べてみてみると、確かに、自分の方向が定まっていないとき、ボクシングで怪我をして不満が溜まっているとき、そういうときは絵の雰囲気が違うんですよね。これは個展をして初めて気がついたことで、心境ってここまで反映されるんやなって思いましたね。

 

── 最後に、今後の目標を教えてください。

 

山崎さん:今から新しい何かを始めようっていう気持ちはなくて、今までやってきたことをもっと深堀りしてやっていきたいですね。目の前の話であれば個展。この前やらせてもらったときは、自分の絵を観た人からの感想をいただけて、すごく幸せな時間でした。人に気に入ってもらえることは嬉しいことで、これはもっと続けていきたいなと思いますね。そして、私は芸人で始まった人生なので、芸人の仕事はずっとしたいです。最近は芸人らしい仕事が少なくなってきているのがちょっと残念やけど、芸人としての生き方は今後も突き進みたいですね。漫才もネタも、どんどんやっていかんとね!

 

PROFILE 山崎静代さん

大阪出身。2003年に山里亮太さんとお笑いコンビ『南海キャンディーズ』を結成。2022年に俳優の佐藤達さんと結婚。芸人、女優、ボクシング、画家と多様なジャンルで活躍。2023年5月に初の個展『しずちゃんの、創造と破壊 展』を開催。8月にも伊勢丹浦和店で開催予定。

 

取材・文/佐々木翔