「メンタルに病気を抱えていた娘が出産で一変して」と話すのは、46歳でおばあちゃんになったおはぎさん。出産や子育てに対して「祖母の目線」で娘の成長も実感します(全3回中の2回)。

 

おはぎさんのお孫さんたち。おててつないで仲良しな姉妹

メンタルに病気を抱える娘の妊娠発覚に…

── おはぎさんの娘さんが妊娠したのは、19歳のときだそうですね。若いこともあり、心配だったのでは?

 

おはぎさん:もっとも心配したのは、娘の精神面でした。娘はメンタルの病気を抱えていて、ずっと通院して薬を飲んでいました。自己肯定感が弱く、すぐ自分を追いこんでしまうところがあって。中学時代は不登校気味で定時制の高校に進学したのですが、途中から行けなくなってしまって。彼氏ができて家を出て、実家から電車でも車でも4時間離れたところで同棲を始めてから妊娠し、その後、結婚したんです。

 

だから、メンタルの病院にも月1回は通院していました。そのかかりつけ医はもともと娘が私と住んでいた実家から通うほうが近い場所にあって。通院のたび長時間移動することになりました。そうでなくても、妊娠中は精神的に不安定になりがちです。離れて暮らしているから、なおさら心配で「大丈夫?何かできることが言ってね」と、LINEや電話で話を聞いていました。

 

── 結婚や妊娠は、娘さんにとって非常に大きな変化でしたね。

 

おはぎさん:妊娠すると服用できない薬もあるので、妊娠中も大丈夫な薬を処方してもらっていました。でも、本人はお腹の赤ちゃんへの影響を気にして服薬していなかったようです。

 

おはぎさん

高校は中退しましたが、「ちゃんと卒業したほうがいいね」と話し合い、妊娠中も通信制の高校に通学。先生も状況を理解してスクーリングで体育の授業があっても、身体に負担のかかる激しい運動は免除してくれたようです。

 

通信制の高校は基本的に在宅で勉強してレポート提出するのですが、頑張っていましたね。おかげで、無事に高校卒業認定資格を取得しました。その努力にはわが子ながら本当に頭が下がるし、ほめてあげたいです。

「母性のめばえ」が自身の病気を改善していくように

── 出産後、育児によって、娘さんに変化はありましたか?

 

おはぎさん:出産したことで、娘には母性がめばえたようです。「子どもを守らなければ」という気持ちからなのか、メンタルの病気が改善されていったんです。いまは服薬もせず、通院もしていません。もちろん、誰でも同じ変化があるわけではないと思うのですが、出産は娘にとって「いい方向」に向かうきっかけになりました。

 

娘は実家にいたころ、洗濯もしない子でした。それが、いまは家族のために家事をして、家計のやりくりもするように。わからないことがあれば電話やLINEで「この料理の作り方を教えて」とか、「こういうときどうしたらいいの?」と連絡がきましたね。

 

こうした行動は、若くして結婚すれば当たり前かもしれません。でも、それまでの何もできない姿を知っているだけに、成長ぶりに目をみはります。実家を出て自分の家庭を持ったことで、自立心がめばえたのだと思います。

 

もちろん、娘を心配する気持ちは今後も消えることはないと思います。いっぽうで、育児に奮闘する娘を見ていると、「私も頑張ろう」と刺激を受けることもしばしばです。孫は無条件でかわいいですが、やっぱり私にとって娘は大切な存在です。

 

上のお孫さんがブロックで作ったおうち

── 娘さんの育児姿を目の当たりにして、いかがでしたか?

 

おはぎさん:里帰り出産だったので、妊娠9か月くらいから実家に戻っていました。産後、慣れない手つきでおむつ替えをしたり、愛おしそうにミルクをあげたりする娘は、すっかり母親の顔をしていました。「もう大人になり、私の手から完全に離れてしまったんだな」と実感し、うれしくもあり、少しだけさみしくもありました。

 

私は当時、フルタイム勤務をしていました。娘と孫(第一子)は生後3か月くらいまで実家にいたので、夜は赤ちゃんに3時間ごとにミルクをあげる手伝いをしていました。40代で、細ぎれ睡眠のあとに仕事へ行くのは体力的にしんどかったですね。もし自分が40代で出産したとしたらこういう感覚なのかと、間接的に高齢出産の大変さも味わった気がします。

2人目の里帰り出産はにぎやかで楽しい日々

── 娘さんは2019年に、第二子の妊娠・出産も経験されたそうですね。

 

おはぎさん:第一子のときと同じ病院で出産したので、妊娠8か月くらいから里帰りをしました。当時、上の子が1歳5か月。好奇心いっぱいでいたずらも大好き、おしゃべりもじょうずで目が離せない存在。そのぶん毎日がにぎやかで、笑いが絶えない生活を過ごせました。

 

とはいえ、里帰りの目的は第二子出産です。娘の夫は仕事があるため自宅にいたままだったので、夜は家族でビデオ電話を楽しんでいたようです。こうした時間は私も邪魔をしないように見守っていました。

 

私は娘ひとりしか産んでいないので、「姉妹」を育てる感覚はわかりません。でも、子どもたちに囲まれて育児に奮闘する娘を見ていると、たくましくなったなとしみじみ感じます。これからも彼女たちを祖母として、そして「娘の母」として見守っていきたいです。

 

PROFILE おはぎさん

シングルマザーとして一人娘を育て、46歳のときに初孫を授かる。現在はふたりの孫がいる。17年間勤務した金融機関を退職後、ライターとして活動。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/おはぎ