「はねるのトびら」で一気に知名度が増したと語る北陽・伊藤さおりさん。番組では「かわいい」と言われたり、相方の虻川さんとピリついていた時期もあったと語ります。(全5回のうち2回)
「もう解散だ…!」ピリつく楽屋の中で
── 2001年にスタートした「はねるのトびら」は、約10年続く人気番組でしたが、番組に出演中は、どんなことを思っていましたか?
伊藤さん:ものすごいプレッシャーでした。キングコングやロバート、ドランクドラゴンにインパルスと、周りの出演者が、おもしろくて実力のある人たちばかりだったので、いつも劣等感でいっぱいなんです。全然かなわないなって。でも、メンバーに入れてもらえたありがたさもあって、必死に食らいついていく感じでしたね。
── 収録も気合いが入りそうです。
伊藤さん:毎回震えてました…!収録の数日前から緊張して、毎回怯えながらフジテレビの門をくぐり、ドキドキしながら現場に入っていくんです。番組は10年くらい続きましたが、最初から最後まで、皆さんに気持ちが追いつかないままでしたね。
あと、収録自体も実際ハードだったんです。リハーサルがとにかく長くて、リハーサルを前日にやって、そのまま寝ずに収録することもしょっちゅう。「自分は3日寝なくても大丈夫だ!」って、言い聞かせながらやってましたが、今考えたらムリですね。当時は、立って話しながら寝ちゃう人も珍しくなくて、みんな限界寸前で頑張っていたと思います。
── 多忙や疲労で、相方の虻川さんと喧嘩するようなことはありましたか?
伊藤さん:どうでもいいようなことで喧嘩になった時期もありましたね。たとえばコンビでTシャツを着るとなって、私が先にピンクのTシャツを着たら、虻ちゃんがすごいキレて、「もう解散だ…!」とか(笑)。自分も言わなくていい言葉を口にしたり。
もちろん本気で「解散だ!」って思ったことはないですし、仲が悪かったわけではないんです。ただ余裕がなくて、2人で一緒の楽屋にいるとピリピリしたり、売り言葉に買い言葉…、夫婦喧嘩みたいな感じですかね。今のほうが確実に穏やかです。
75キロあった学生時代
──「はねるのトびら」をはじめ、伊藤さんは周りの出演者やスタッフから「かわいい」と言われることも多かったと思いますが、ご自身ではどう感じていましたか?
伊藤さん:うーん、なんかね、ぶっちゃけた話、初めていうような話だけど…。私自身は、周りの芸人さんが凄すぎて、おもしろさではかなわないという思いがあって。じゃあ、私ができることってなんだろうってなったときに、「かわいい」と言われることで存在感のフリになる。虻ちゃんの話のフリになるとか、立ち位置になると思って必死でしたね。
もともと私は、おしゃれも苦手で化粧もイマイチ。自分が「かわいい」って扱われること自体、違和感でしかなかったんですけど…。
── 「かわいい」と言われて、嫌な気持ちになることはありましたか?
伊藤さん:なんだろう…他に何もないんだから、受け止めて頑張ろうって思ってた感じですかね。もともと学生時代から根暗で地味で、顔中ニキビ面。体重も75キロもあって、すごい太ってたんです。ソフトボールに入って真っ黒に日焼けしていて、コンプレックスの塊というか、かわいいとは真逆の性格できたんですけど。
でも、「かわいい」と言われることで、あれはあれで、私なりに頑張って自分の立ち位置をまっとうした感じです。
PROFILE 伊藤さおりさん
1974年生まれ、埼玉県出身。北陽のメンバーとして活動。YouTube「北陽チャンネル」や静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」でも活躍中
取材・文/松永怜