仕事に家事に子育てに、日々邁進するイラストレーターの横峰沙弥香さん。自宅が仕事場だからこその楽しみや苦労、仕事を捗らせる工夫などを、ちょっと笑えて癒やされるイラストとともに紹介します。体のだるさがなかなか取れず、何かおかしいと病院で検査を受けた横峰さん。まさかの検査結果に衝撃を受けることに──。
想像だにしなかった場所に異常が見つかって
辛すぎるときは浮上できる状態になるまでひたすら沈む作戦で、キャパオーバーから復活を遂げたはずでした。それでもなかなか取れなかった身体のだるさを怪しんで病院へ行ってみたところエコー検査で妙なものが見つかり、すぐに病院を移ってCT検査を受けることに。自分でも想像だにしなかった場所に異常がありました。
卵巣嚢腫。
卵巣にできた腫瘍で多くは良性。なかでも「奇形腫」という、ごく一般的なものであるとの見立てにひとまずホッとするも、なかなかの大きさに肥大していることがCT検査でわかりました。卵管がねじれたり破裂したりというリスクを考えると早めに摘出をしたほうがいいだろうとのことで、あれよあれよと話が進み、最短で手術を行うことになりました。
これはとてもラッキーな流れです。沈黙の臓器のひとつとも言われる卵巣の腫瘍、放っておくと激痛で緊急搬送なんてことも起こり得るくせに自覚症状がほとんどないため、今回のように偶然発見されるとことはあまりないのだそう。
それなのに子どもたちの学校や夫のスケジュールを確認しながら入院日を決め、各方面に断りを入れるなど自分の予定を調整していると自分が入院することへの煩わしさが募ってくる。
夫が入院するときにはまったく感じなかったこの感情…私は自分が家庭を離れることに対してストレスを感じていることに気がつきました。
家庭は私の職場であり、母として大切な子どもたちと過ごす場所であり、私個人としても大好きなものだけが詰まった秘密基地のような場所。たった一週間とはいえそこを離れるだなんて考えたくない。離れてしまうと何かが変わってしまう気がする。
自分がつくり上げた、自分の居場所に対する重くて暗い執着心に気づいてしまった私は心底ゾッとしました。
私は自分だけが心地よい環境を構築しながら「ビオトープ」などと綺麗な呼び方をして、外の空気を遮断していただけなんじゃないか。私がやっていたことはよくないことなのか?だとしたらこれからどうするのが最善なのか…?
思わぬタイミングで見つかった卵巣嚢腫は何もせずにゆっくりと考える機会をくれたのかもしれません。
文・イラスト/横峰沙弥香