フジテレビアナウンサー時代は、報道からスタートした中村仁美さん。顔が映らない仕事も多く、取材以外の作業や、独特の緊張感も味わったといいます。同期や先輩の活躍を見ながら、報道現場では緊張感のある現場でも揉まれていきます。(全4回中の2回)
ピリつく空気のなかでも
── 2002年にフジテレビに入社されましたが、入社してまずどんなことを思いましたか?
中村さん:毎日が新鮮でした。当時はアナウンサーが注目される時代でしたし、高島彩さんとか、素敵な先輩方や同期もいて、刺激になりました。
── 同期は、中野美奈子さんも一緒だったそうですね。
中村さん:中野美奈子ちゃんと、もうひとり男性アナウンサーがいましたね。みなちんは、入社前からミス慶応としてネット界隈では有名で、既にキラキラしていて。私ともうひとりの同期の男性は、まだまだ無名だったし「私たちも、頑張っていこう…!」って励ましあっていました(笑)。
みなちんとは入社前、まだ時間に余裕があった頃は、お互いの友達を呼んで、みんなでご飯を食べたり、一緒に旅行に行ったこともあったんですよ。
ただ、入社してしばらくすると、みなちんは寝る間もないほど忙しくなって。みなちんは『めざましテレビ』に、私は安藤優子さんの『FNNスーパーニュース』という夕方の報道番組に出るようになり、アナウンス室で顔を合わす機会は減ってしまいました。たまに社内で会うと「久しぶり!」と声をかける感じでしたし、週刊誌に不仲説も書かれていましたが(笑)、顔を合わせるタイミングがなかった、というのが一番ですね。
みなちんからもいい刺激をもらいながら仕事に向き合えていたと思います。
── それぞれの勤務時間体系がありますし。『FNNスーパーニュース』のお仕事はいかがでしたか?
中村さん:フィールドキャスターと言って、スタジオには行かないで、現場で取材した情報を中継で伝えるお仕事でした。取材はみっちりしていますが、安藤さんから何を聞かれるかわからないので、答えをいくつもいくつも用意するんです。生放送の限られた時間のなかで、情報を正確に伝えないといけない。間違えられない。あの経験のおかげで成長することができたと感じています。
── もともと報道希望だったのですか?
中村さん:バラエティやスポーツを希望して入社しましたが、人員が足りないので報道に回されたのでしょうか(笑)。報道は、私がマイクを持っている手しか映らないとか、背中越しにカメラが入って顔が映らないことも多いですし、根気もいります。
また、アナウンサーといっても新人で、報道現場では立場が下っ端なんです。中継先で取材した内容を伝えて終わりではなく、中継終わりにケーブルを巻いたり、スタッフさんと一緒に道具を片づけたり、裏方的な作業も多かったですね。「早く動いて!」って声が聞こえるような現場もあったりして。
── 若干ピリッとしそうですね…。
中村さん:ただ、そのせいか勘違いしないで済んだ、と思うことはありますね。ややもすると、華やかで勘違いする環境にいたので、そこはありがたかったと思います。
バカルディの人がいる
── 報道のお仕事をしながら、徐々に深夜のバラエティにも出演されていったそうですね。
中村さん:最初に担当したバラエティで、夫とも知り合いました。
芸人さんによって、進行の仕方も全然違いました。ゴールを見据えて、一気に話を進める芸人さんもいれば、そのときの瞬発力で笑いをつくってくれる芸人さんもいます。ゴールを見据えている芸人さんは、途中で絶対邪魔しちゃいけないですし、瞬発力で進める芸人さんには、こちらが自然体でいるほうが、きっと笑いをつくりやすいんだろうな、と。
── 旦那さんは、いかがでしたか?
中村さん:夫と出会ったときは、芸人さんうんぬんよりも自分のことで精一杯でしたね。もうちょっと余裕が出てから、やっと周りが見えた感じでした。話をした記憶もほとんどないかなぁ。
ただ、第一印象は、「バカルディの人だ」って思いました。当時は「さまぁ〜ず」でしたが、私のなかではバカルディだったので。
── 現在も、バラエティ番組にたくさん出演されています。
中村さん:報道からスタートしましたが、バラエティで育ててもらった思いも強いですね。バラエティに出ているときはやっぱり楽しいですし。
また、フジテレビを退社してフリーとなった今は、仕事の内容もまた変わっていきました。フジテレビ時代は、自分が足を運んで取材をする側、話を聞き出す側にいましたが、今は話を聞かれることが多いです。
それでも、フジテレビ時代に経験した取材やバラエティは、今の自分の軸になっていると思います。
PROFILE 中村仁美さん
2002年フジテレビに入社。2011年お笑いコンビ「さまぁ~ず」の大竹一樹さんと結婚。3児の子育てをしている。2017年7月フジテレビを退社。現在、テレビ・ラジオ・イベント出演など幅広く活動中。
取材・文/松永怜