フリーアナウンサーの中村仁美さん。もともとは建築やインテリア関連の仕事を考えていた中村さんが、なぜアナウンサーを目指すことになったのか。子どもの頃からなんでもできるという自負があったと語る中村さんが、みんなの前で号泣することもあって──。(全4回中の1回)

講習費は掛からないなら

── 2002年にフジテレビに入社されましたが、もともとアナウンサー志望だったのでしょうか?

 

中村さん:大学に入った当初は、建築やインテリア関係の仕事につけたらいいなって思っていました。大学3年生の就職活動を考える時期になったとき、友達でアナウンサーになりたいと話をしている子がいたんです。そういう選択肢もあるのか…と思っていたら、「アナウンスセミナー募集中!あなたも体験してみませんか?」と、テレビのCMが流れてきて。直感で行ってみよう!と思ったのが、始まりでした。

 

── アナウンスセミナーは、どういった雰囲気でしたか?

 

中村さん:「本気の人たち」がいっぱいいましたね。メイクも衣装も雑誌から出てきたような煌びやかな感じで、「私、絶対にアナウンサーになりたいんです…!」といった熱量が、その場にいるだけで伝わってくるんです。実際、情報もたくさん持っていて「どこどこのセミナーは青田買いだから、絶対行ったほうがいい!」と教えてくれたり。

 

── 受講生は、何人くらいいましたか?

 

中村さん:私が通ったときは100人くらい受講生がいて、1クラス30人ちょっと…、確か3クラスくらいあったのかな。受講費も無料だったんです。5日間の講習が終わると、担当者の方に「上級編に来てみない?」って、声をかけてもらいました。上級編でもお昼のお弁当代だけで、講習費も掛からないと。でも、サークルもあるしどうしようか…と迷っていたら、友達から「それは行かなきゃいけないやつ…!」と。そのひと声で、参加することにしました。

みんなの前で泣き崩れてしまった日

── いざ、上級編に参加してみていかがでしたか?

 

中村さん:上級編は100人から10人に人数が絞られていて、実力も熱意もさらに高い人たちが集まっていました。周りの環境に影響を受けたのか、自分でも、せっかく上級編に選ばれたし、頑張ってみようって思い始めていました。

 

── やる気も上がっていって。

 

中村さん:でも、途中である課題が出たんです。私だけまったくできなくて、ひとりずつ現役アナウンサーの方から講評をいただくときに、「中村さん、これはちょっと、評価に値しないです」と言われ、悔しくて泣いちゃったんです。

 

── その場で…ですか?

 

中村さん:はい(笑)。びっくりして、その場で泣いちゃって。みんなができているのに、どうして私だけできなかったんだろうって、すごい悔しくてショックで。

 

たぶん、子どもの頃から小学校では学級委員をやったり、中学受験も頑張ったりと、どこかで「自分はなんでもできる」、そんな自負があったんだと思います。それなのに、自分ひとりだけできなかったことが、相当悔しかったんでしょうね。負けず嫌いでしたし。

 

そこから急にスイッチが入りました。入社試験の1か月前とか、かなりギリギリな時期でしたけど、「私はこの仕事を極めよう!」と、意識が変わった瞬間でした。

 

その後、当時フジテレビアナウンサーだった、木佐彩子さんがアナウンサーのお仕事について、お話ししてくださる機会があったんです。そのときの、木佐さんの姿がとてもキラキラしていて。内面から溢れでるキラキラっていうんですか?毎日充実していそうだし、きっと、この仕事は楽しいんだろうなって思いました。

あんな茶髪の子は受からない

大学時代の中村さん。白衣姿で茶髪から黒髪に戻した頃

── テレビ局の入社試験もキラキラした方がたくさんいらっしゃいそうです。

 

中村さん:すごかったです。最終面談に向かって人数がどんどん絞られていくと、読者モデルはもちろん、ミスコンに出たとか、すでにテレビの世界に片足を突っ込んでいるような人もたくさんいました。

 

スーツの色も1次試験では、グレーとか紺のスーツの人もいますが、最終面談に近づくにつれ、黄色とか水色とか、かなり個性的なスーツを着ている子もいましたね。その子たちいわく、「あぁ、あのスーツの子ね」って覚えてもらうために、1次試験から印象に残るようなスーツで行くと言っていました。私はそういったテクニックも知らないので、母親と一緒にスーツを探しに行ったときも、「これ、いいんじゃない?」って無難にベージュのスーツを選んでる感じでしたけど(笑)。

 

── 中村さんは、いわゆる「ミスコン」など、何か出られましたか?

 

中村さん:私は国立の女子大だったので、ミスコンがなかったんです。ただ、文化祭のようなものはあって、実行委員の方から誘われて出たことはあります。でも、慶応のミスコンみたいに、ウエディングドレスを着るような感じではないです。

 

── と言いますと…と?

 

中村さん:「りんごの皮むき誰が早いか」みたいな。早さとか長さを競って、私は2番になりました(笑)。

 

大学時代、テニスしかしていなくて、かなり日焼けもしていました。髪の毛の色もすごい抜けていて、「あんな茶髪の子は受からない」「あの子は絶対無理だ」って周りから言われていたくらい。自分でも、「アナウンサーとは、こういった雰囲気だろう」というイメージ像も、特にわかってなかったと思います。

 

ありがたいことに内定を頂き、フジテレビに入社することができました。そこから世界がどんどん変わっていきました。

 

PROFILE  中村仁美さん

2002年フジテレビに入社。2011年お笑いコンビ「さまぁ~ず」の大竹一樹さんと結婚。3児の子育てをしている。2017年7月フジテレビを退社。現在、テレビ・ラジオ・イベント出演など幅広く活動中。

 

取材・文/松永怜