勇気を持ってチャレンジしてよかった
── その後、いざ、研修が始まっていかがでしたか?
原さん:最初の2か月は、夜になると毎日LINEのビデオ通話で子どもたちと話をしていました。
「大丈夫?本当に大丈夫?」って毎回心配で聞いていたんです。でも、途中から子どものほうが慣れてきた、もしくは飽きてきたのでしょうか。研修が後半になるころには、「連絡は毎日じゃなくても大丈夫」と言われました(笑)。あんなに不安がっていたのに、子どももたくましくなったんだなぁ…と思いましたね。
夫にも、家のことをすごく頑張ってもらったし、子どもたちも、私がいなくてもなんとかなると、自信もついていったんだと思います。
また研修中は月曜日から金曜日まで毎日授業があって、土日のみ横浜の自宅に帰宅。家のことや子どものお世話などをひと通りしてから、日曜日の夜20時台の新幹線に乗って、三島に戻ってまた研修に備える生活でした。
── その後、新幹線運転士の国家資格の試験に合格。半年間の実技訓練を経て、現在はJR東海の運転士として活躍されています。
原さん:4か月の研修期間に家族も強くなったのでしょうか。今は泊まり勤務があってもほとんど動画で話すことはありません。下の子も現在小学4年生になり、少し自分に自信がついたように感じます。
ただ、やはり仕事上、家を空けることは多いので、スキンシップは大切にしています。翌日の出勤が朝早くて、子どもたちが起きる前に家を出ないといけないようなときは、前の晩に抱きしめたり、たくさん会話をするようにしています。
運転士は緊張感を強いられるハードな仕事ではありますが、あのときに勇気を持ってチャレンジしてよかった。家族に感謝し、そしてともに成長しながら日々、運転業務に勤しんでいます。
PROFILE 原由佳さん
はらゆかさん。2003年にJR東海入社。駅、車掌業務を経て育休を取得した後、2022年から新幹線運転士として活躍。
取材・文/松永怜 撮影/坂脇卓也