鹿の問題は難しいと眉間にシワを寄せる前にできること
鹿自体へも関心を抱いて調べていくと、鹿と日本人は縄文時代、もしくはそれ以前からの関わりがあったと知りました。
「縄文時代、鹿と人は、“狩猟する・される”関係。それが弥生時代になり、農業が始まると“獣害を受ける、与える”関係も出てきました。
さらには、信仰の対象にも。鹿の角は1年に1度生え変わるので、豊穣を意味するようになった説があるそうです。
日本人は、古くから鹿を食べたり駆逐したりしてきたのに、一方で神様として崇める。一見矛盾しているけれど、不思議と調和が取れています。
それが面白いし、日本人との歴史や関係の深さも感じられます」
とはいえ、実際のところ、現在、鹿肉を取り巻く状況は複雑です。狩猟する人から見た問題、食肉に精肉加工する場合の問題、農家とのつながりなど、立場によって抱える問題が異なっているためです。
一方から見ると問題だと考えられていることも、別の視点からするといいことだとされている場合もあり、考えが複雑に絡み合っています。
でも、あかりんごさんは、現状の問題をひとつひとつ解決していく方法を選ぼうとは思っていません。
「鹿問題は“難しい課題”と眉間にしわを寄せながら、鹿肉料理を食べたいと思う人はいない気がします。せっかくだったら、あれこれ考えず、シンプルにおいしいものを食べて幸せを感じるほうがいいはずです。
鹿肉は現在、地域ブランド化が進み、この道の先輩たちが全国各地でおいしい鹿肉ブランドを作ってくださっています。
私が考えているのは、このバトンを受け継いで消費者目線に立った、新しい鹿肉商品を作ること。
鹿は地域資源であることに加え、栄養面などにおいて優れています。しかも、文化的、歴史的背景も面白く、じつは日本人にとってすごく身近な存在なんですね。
鹿が持つさまざまな側面とお客さまのニーズがうまくマッチングするような商品を作りたいです」