採用倍率は5倍の年も 若い人材が集まるわけ

“マッチョ”と介護──。異色ともいえる組み合わせを実現させたのは、丹羽代表のかっこよさにこだわる姿勢でした。

 

「姉が高齢者向けの介護の仕事をしていました。私はもともと美容師だったので、ボランティアでヘアカットをして欲しいと言われて。

 

初めて触れた介護の世界では、ありがとうの重みが違うように感じて、素敵な仕事だと思うようになりました。くらべられるものではありませんが、美容師に負けないくらいかっこいい。これからさらに必要とされますし、まだまだ可能性がたくさんある業界だと思いました」(ビジョナリー代表取締役 丹羽悠介さん)

 

慢性的な人手不足と言われる介護業界で、こちらの会社のスタッフの平均年齢は20代。丹羽代表が若い人材にこだわる理由は、利用者の家族からかけられた言葉にありました。

 

「障がいをお持ちの方の支援を始めたときに、私が『若いだけでありがたい』という声を利用者様のご家族からいただきました。なぜかと聞くと『年齢的に親の私たちの方が先に亡くなる可能性が高いので、残された障がいを持つ子どもが安心して過ごせるか心配だ』と。介護に関わる若い世代が増えれば、ご家族の安心感に繋がると思いました」

 

利用者の方に話しかける勤務中の吉村さん。笑顔が弾ける!

そして丹羽代表は、若い人材が集まる魅力的な会社を作りたいと思うように。

 

「ダイエット目的でジムに通い出したのですが、せっかくトレーニングを始めるなら目標があったほうがいいのではと言われ、大会出場を決めました。そこで男性目線で見てもかっこいい方にたくさん出会いました。

 

日々努力をしているマッチョたちはかっこいい。単純かもしれないのですが、わかりやすくかっこいい人たちが介護の仕事をしたら、かっこいい仕事としてイメージが変わるのではと思いました」

 

フィットネス実業団のスタッフ。自慢の筋肉は介護の仕事にも大会にも活かされている

若い世代がどんな会社で働きたいか、街頭でのアンケート調査をしたこともあったそうですが、意外な回答が多かったといいます。

 

「実は、将来やりたいことが定まっている若い世代は少数でした。それよりも楽しく働きたいという意見が多く、人間関係が良くて働きたいと思う会社があれば、人材は集まると思いました。

 

それならば選ばれる会社になればいい。介護職が大変だというのはイメージだけで、実際の介護現場を何も知らない方が大半だと思います。募集要項に見栄えよく掲載はしていても実際は違う会社もありますが、うちはそのギャップが少ないと思います。風通しが良く裏表がないことも大切にしています」

 

SNSで発信を続け若者向けの採用を強化し、多いときでは55人の採用枠に対し新卒・中途の方から300人近い応募があった年も。

 

「どんな会社も、これからの時代を創っていく若い世代、新卒採用にどれだけ力を入れられるかにかかっていると思っています。学生がどうやって選ぶか、どうしたら選ばれるかを一生懸命考えて、制度や体制を時代に合わせて変えていく覚悟を持つことがスタートではないかと思っています。

 

介護分野の人材不足は、テクノロジーの力も借りて効率化を進めなければならない段階にきています。でもそれに抵抗がない若い世代がいないと浸透しないと思います。

 

この業界は、アナログな部分も多く残っています。利用者様とのやりとりも現在は対面で行っていますが、希望にあわせてオンラインとクラウドサインで効率化することもできます。日常的にITを使っている世代が現場にいることが今後ますます大事になると思っています」


取材・文/内橋明日香 写真提供/(株)ビジョナリー