諦めた声優の道を再び挑戦しようと思ったワケ

赤い花模様の袴が素敵。東大の卒業式にて、笑顔で1枚

── 東大に入学し、在学中ではなく東大を卒業してから、声優の養成所の学校に通われたとか。

 

鈴木さん:大学に入ってから、趣味やサークル活動、起業をしたこともあって、かなり忙しくなってしまいました。声優は10代から目指す人も多いのですが、自分は何も動けていないまま20代に。自分の気持ちに蓋をしていた部分もあります。

 

でも、私より少し年上の友達が、「声優の仕事にチャレンジし始めた」と、話を聞いたんですよね。そこで、「やっぱり私も声優になりたい!」と改めて感じて。

 

そこからは早かったですね。大学はすでに卒業していたんですが、大学院に通いながら事務所の準所属になりました。その後、さらに1年ぐらいで事務所に正式に所属させてもらいました。

 

普通は、2年の養成期間を経て準所属、数年後に所属になるケースが多いのですが、私は、もう圧倒的スピードで声優になれました。

 

── なぜそこまでハイスピードで活躍されていったのでしょう?

 

鈴木さん:多分、私の経歴…東大から声優という経歴もキャッチーな気がしますし、自分で言うのもなんですが、キャラクターも使いやすいのかもしれません。

 

あとは、学生時代からコスプレサークル団体を立ち上げたり、起業の経験もあったので、「鈴木柚里絵がおもしろい。声優に起用しよう」と思っていただけたんだと思います。

 

── 今は、ご自身がやりたいことはできていますか?

 

鈴木さん:今は、自分自身が本当にやりたかったことに取り組めているので、とても満足です。母は、いまだに私の声優としての活動は認めてなくて、顔を見れば「医者にならない?」「研究者にならない?」と言ってきますけどね(笑)。

 

でも、あるとき母が「声優になる夢を、あきらめさせなければよかった」と言っているのを聞いたんです。

 

なぜそう言ってくれたのか、今でもよくわかりませんが、当時、私が高校生のときに、声優について話をしたときから時間も経って、少し理解を示してくれたのかも…?

 

いまだに母とすべて話し合えているかというと、そうではないです。それでも母がたくさん愛情を注いでくれたこともわかっているし、母のことは大好きです。昨年末、父が亡くなったこともあり、これからはより母のことをいっそう大切にしていきたいと思っています。

 

PROFILE 鈴木柚里絵さん

すずきゆりえ。1991年生まれ。声優。忍者。東京大学、東京大学大学院卒。日本、中国、韓国の武道を取得。「ミス総理大臣」グランプリ受賞、政府公認のコスプレイヤーとしても活動した。

 

取材・文/間野由利子