「高ぶる気持ち」警察に就職するも休日は新喜劇通い
── おもしろい子どもがいたら「吉本行け!」が関西人のほめ言葉ですが、酒井さんのご両親も?
酒井さん:
いやいや、「絶対あかんぞ!」って大反対です。両親はふつうのサラリーマン、2人の妹も現在は中学校の教師、証券会社勤務とカタい家族なんです。
それなら、まず自分も両親を安心させる職業についてから、新喜劇に入ろうと作戦を練りました。
奈良県警に警察事務で入ったので、両親には私が新喜劇をあきらめたように見えていたはずです。
── ということは、新喜劇へのお気持ちは…?
酒井さん:
最初の合宿訓練で毎朝6時からランニングさせられるんですが、ツラすぎて日記に毎日「雨降れ、ランニングなくなれ!」「新喜劇行きたい!」と書き続けました。
公務員の道を選んだものの、「絶対、新喜劇に入ってやる」という思いはゆるぎないものになりました。
配属先の交通課の仕事が休みの週末は、大阪のなんばグランド花月に通いつめて、当日券売り場に並び、食い入るように新喜劇を観続けました。
警察職員時代に観た舞台のなかで、最初から最後まで笑い転げた作品が忘れられません。
客席の子どもたちが舞台に向かって、「うしろうしろ!危ない!」と掛け声をかける場面がとくに。
客席を巻き込む芝居のすばらしさに感動して、子どもまで楽しませる芝居をやりたいなぁとますます新喜劇熱は高まりました。
ようやく1年間勤務したので覚悟を決めて、新喜劇の“金の卵オーディション”を受けると父に宣言しました。
実際はビビりながら、オーディション概要をそーっと見せただけなんですが(笑)。父は「まだあきらめてなかったんか!?ええかげんにせい!」とキレ気味で。
でも最終的には、「どうせ受からんやろ」と父が根負けし、受験を認めてもらいました。
── けれど、受かってしまった!
酒井さん:
合格がわかってから、母と妹たちが「お父さんが、“受けていい”なんて言うからや!」ってすごい剣幕で怒りました。
私、実家が大好きなんですけど、母に「新喜劇入るなら、この家から出ていきなさい」とまで言われました。
それなら「出ていく!」って覚悟を決めて返事したのを覚えています。