予報への自信でコメントが変わることも

── 気象のプロとして予報をしていても相手が自然現象なので、難しい点も多いと思います。

 

くぼさん:風の強さや向きが変わると、時間や場所などが予報とズレます。予報エリアは広いので、同じ予報エリア内でも場所によって、天気や気温が違うことがあります。

 

エゴサーチすると同じ日に、「くぼてんきの予報、当たってた!」と喜んでくれている人と、「くぼてんきの予報、全然違うじゃん!」と怒っている人が、それぞれいる状態になりますね(笑)。

 

エリアの話では、天気予報をするエリア分けはテレビ局や番組によって違うんです。たとえば埼玉県だと、熊谷の観測地点で予報する番組もあれば、さいたま市の観測地点で予報を出す番組もあります。

 

── 熊谷市とさいたま市では、天気も気温も違うことが多そう…。

 

くぼさん:表示として「熊谷」とか「さいたま」と出ますが、全国区の番組だと地域のくくりはどうしても広くなります。どんなに細かく区切っても、基本はデータを収集する観測地点が基準になるので、そこから離れた場所の予報は難しいですね。

 

昔と比べると観測地点は増えて、観測機器も進化しているので、予報精度は高くなっています。それでも全員に「当たってた!」と思ってもらえる予報は、本当に難しいです。

 

そのかなでも、すべての人に納得してもらえたり、楽しんでもらえたりするような天気予報を目指しています。

 

── それでも「今日は難しいな…」というときも、ありますよね?

 

くぼさん:わかりやすい話では大気の状態が不安定とか、「これはどう転ぶか、予報しにくいな」と思う状況はありますね。

 

仮に今は晴れているけど、雨が降る可能性があるとき。自信を持って「降る」と言える場合は、「傘を持ってお出かけください」。少し自信がないと「傘があると安心ですね」。もっと自信がないと「傘があると安心かもしれません」みたいに言い方が変わります(笑)。

 

言い回しはそれぞれですけど、僕に限らず気象予報士は予報の自信があるときと、ないときとでは言い方が違っていると思います。

 

気象予報士のコメントをよく聞いて「あれ?今日は自信ない?」と気づいたり、その微妙な匙加減を楽しんだりしている人もいるかもしれませんね(笑)。

 

気象予報士のくぼてんきさん
「入道雲をイメージしています」というトレードマークのパーマヘア

 

PROFILE   くぼてんきさん

気象予報士、防災士、こども環境管理士、紙芝居師。1983年生まれ、大阪府出身。『ZIP!』(日本テレビ系)で天気解説を担当。著書に『くぼてんきの「天気のナンデ?」がわかる本』(あさ出版)ほか。

 

取材・文・撮影/鍬田美穂