インテリアに馴染む骨壺なら手元供養も気軽に

── 現在は棺作家をメインに活動されています。ただ、最初に手掛けられたのは、骨壺だったのですよね?

 

布施さん:
会社員時代に新規事業として、いろいろな企画を提案したなかのひとつだったんです。当時の上司が偶然、映画『おくりびと』のモデルになった納棺師の方とご縁があって、お話を聞くことができました。

 

1年ほど葬儀業界の勉強をして、2015年にインテリアに馴染む骨壺のブランドを立ち上げ。初めてエンディング産業展に出展したとき、作品をご覧になった20代の女性も、80代の女性も「私が亡くなったら、これに入れてほしい!」と言ってくださって。

 

葬儀業界の男性は「若い人だけでしょ」と言っていたのですが、全然そんなことはなく(笑)。「こういうのに入れるなら、最期も楽しみになる」とおっしゃる高齢の女性もいて、「年齢は関係ない」と思いましたね。

 

 2015年のエンディング産業展に出展した、スワロフスキーをあしらった骨壺のひとつ
 2015年のエンディング産業展に出展した、スワロフスキーをあしらった骨壺。蓋を開けると遺影が納められる

──「インテリアに馴染む骨壺」というコンセプトは、新鮮ですね。

 

布施さん:
友達の家へ行ったとき、リビングなどに唐突に骨壺と遺影が置かれていて、「これには触れたほうがいいのか、触れないほうがいいのか…」と迷うことがありました。でも、インテリアに馴染むデザインなら、逆に「これ実は、骨壺なんだ」と、話しやすくなるんじゃないかと思うんです。

 

最近は墓じまいや散骨が増え、今後は手元供養をするのが一般的になると思います。自宅にお骨を置くのであれば、インテリアに馴染むデザインが求められますよね。

 

ただ私自身、今は「骨壺にこだわらなくても、好きなデザインの入れ物にお骨を入れればいい」と考えていて。今現在の骨壺候補は、好きなブランドのキャンドルが入っていた空き瓶なんです(笑)。

「生まれ変わった」と感じられる入棺体験

── アトリエでは制作活動と並行して、終活を意識したワークショップもしているそうですね。

 

布施さん:
私が今49歳で、参加者には同年代の女性が多いのですが、若い方でも興味を持つ人が増えています。介護や終活などに悩んでいたり、不安を抱えていたりする。「でも身近な人には、相談しにくい。知らない人のほうが、話しやすい」という方が意外と多いですね。

 

── そのなかで実際に棺に入る、入棺体験も実施しているとか。

 

布施さん:
最初は、友達が企画した入棺体験イベントに参加したんです。棺に入っている時間は1~3分と短いですが、蓋を開けられたとき「生まれ変わった」「生き返った」と感じました。

 

人によって、感覚はかなり違います。棺に入った瞬間、家族の顔が浮かび「まだ死ねない」と思って、涙が止まらなくなる人。棺のなかで「自分は大丈夫。まだまだ死なない」と実感する人…。

 

反応は人それぞれだけど、入棺という“仮の死”を体験することで、みんな「生に対するポジティブな気づき」を得るみたいです。

 

 入棺体験に使用している作品のひとつ
 入棺体験に使用している作品のひとつ。ロイヤルブルーの棺に入棺時に添える真紅の花が映える

── どの棺も個性的で、素敵ですね。

 

布施さん:
海外から取り寄せた壁紙や、国内で生地を買いつけて制作しています。壁紙もですが、生地の柄を見て「この洋服が着たい!」と思うのと、近い感じです(笑)。

 

骨壺もそうですが「これに入りたい!」と思える棺というのが、大事だと考えています。

 

アトリエの廊下に並べられた作品の一部
アトリエの廊下に並べられた作品の一部。上品なツイードやピンクベースの花柄などをあしらい、デザイン性の高さを感じさせる