「まさか…」義母の調理を覗き見したら
わが家のフライパンは、大きめの直径28cm。油を馴染ませて使う鉄製のフライパンもありますが、義母が愛用しているのはもっぱら、こびりつきにくい樹脂加工をしたタイプのものです。
このフライパンが、わが家では半年に1つのペースでダメになるのです。
表面の樹脂コーティングが剥がれ、ガビガビにこびりつくようになるまで大体半年。まあ使用頻度も多いし、注意書きの内容を守って使っているのだからそのくらいが製品としての寿命なのかなぁ、でも捨てるのもったいないなぁ、と私はぼんやりと考えていたのです。
しかし、Twitterで他の方が台所用品について語るのを聞いていると、どうも皆さん、そんなに頻繁にフライパンを買い替えることはない模様。わが家の消費はかなりハイペースであることが判明したのです。
おかしい…私は注意書きの通り、強火で使わない、空焚きもしない、金属ヘラで強くガリガリ擦ったりもしていないのに…これはまさか…。
私のうっすらとした疑念が確信に変わったのは、義母が調理をしている様子をそっと覗き見してみたときのことでした。
フライパンで豚ロース肉のソテーを作ってくれていた義母ですが、こげ目をつけたかったのか、迷うことなくIHコンロの火加減を最強にします。
さらに、若干劣化を始めた樹脂コーティング部分のこびりつきを、容赦なく金属製のフライ返しでガシガシと削ります。
さらに片づけの際には、洗った後の水滴のついたフライパンを火にかけて乾かすという、それ樹脂加工のフライパンにはまったく必要ない過程ですよね?という作業まで。
強火、衝撃、空焚き。
禁止されてること全部やってるじゃないですか!!!
「ごめんね、守ってあげられなくて…」
わが家の台所は大人2人が立つには狭いので、私は今の今まで義母のフライパンに対する暴挙に気づかずに、樹脂加工フライパンってこんなに早くダメになるんだな〜と、呑気に十数年もの間思い込んで生きてきたのです。
ごめんね、フライパン…守ってあげられなくて…。
今まで捨ててきた数多のフライパンたちに懺悔の祈りを捧げます。
そうして義母に改めて、こんこんと、樹脂加工のフライパンの扱いについて説明をしたのですが…。
「ちょっとくらい平気よ」「強火でなんて使ってないわよ…たまにしか」「昔からフライパンは火にかけて乾かしてたでしょう」と、同居嫁に叱られている気まずさもあってか、言い訳のオンパレード。
説明書に!ダメって!書いてあるでしょうが!
しかし義母は根は素直な人であるので、以降はかなり気をつかってフライパンを扱ってくれているようです。
その証拠に、今年に入って買い替えたわが家のフライパンは、年の瀬を迎えてもまだそこそこ良い状態を保っています。
半年に一度買い替えていたことを思うと、これでも大進歩だな…と胸をなで下ろす同居嫁でした。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ