「えっ」人事異動が進むなかで命じられた社長就任の依頼
熱量が周囲に通じて、藤﨑さんに大きな転機が訪れます。「役員になってほしい」と声がかかったのです。
「そのときは、“ようやく願いが通じた!”と思いました。ところが、“ついては社長になってください”と告げられ、思わずイスから転げ落ちそうに(笑)。
どうして私が社長に選ばれたのかは、詳細は教えてもらえないんです。
でも、当時求められていたのは、“なんとしても会社を変えたい”と強い情熱のある人間だったのかもしれません。その頃の私は、必死にいくつも改善案を出していました。
いまの私が見たらそのアイデアは、“とくに魅力的なものではなく、ありきたりなもの”ばかり。それでも、その熱意が評価されたのではないかと。
私が社長になると同時に、大々的な人事異動が行われました。その結果、私は代表取締役、営業部長、スーパーバイザーを兼任する形になりました」
2018年に代表取締役になってからはできるだけ店舗を回り、現場の声をしっかり聴き、本部の決定も丁寧に伝えるなど、コミュニケーションを積極的に図るように。
さらに「ドムドムハンバーガーらしさとは何か」を追求し、おいしさはもちろん、話題性のある商品を次々と開発。3年後、2021年3月には黒字化を達成します。
「ドムドムハンバーガーというと、初めて行ったハンバーガー屋さんで懐かしい、といった声をよく聞くんですね。
V字回復を果たせたのは、お店を愛してくださるお客さまと、ずっと支えてくれたスタッフのおかげだと思います。
だから、企業の成長よりも、みんなが幸せになることを重視したいです。ドムドムハンバーガーに関わる全員に喜んでいただけることが目標ですね」
取材・文/齋田多恵 撮影/上岡美緒 画像提供/ドムドムハンバーガー