居酒屋で働いていたときの常連客から思わぬひと言で、人生が急転した藤﨑忍さん。出向いた先は業績が悪化していたドムドムハンバーガーです。「なんとかしたい」の思いで企画や改善を出し続け、入社9か月、社長に抜擢されました。異業種から突き進んだ胸の内を聞きました(全3回中の2回)。
「居酒屋のおばさんがここまで」会社を驚かせた行動力
専業主婦から39歳で渋谷109のショップ店長になり、その後は居酒屋店のアルバイトや経営をしていた藤﨑さん。
細やかな心配りや料理のおいしさやを気に入り、常連として通っていたドムドムハンバーガー親会社の専務が、藤﨑さんに声をかけます。
「“商品開発に協力してほしい”と誘われました。そこで、まずはどんなお客さまがいらっしゃって、どんな雰囲気なのか様子を知ろうとお店を見学してみることしました。
関東の店舗は車で周って、会社に交通費を出してもらい、関西にも行ってみることに」
関西では4店舗回り、戻ってきてからレポートを提出したそうです。
「何時から何を食べて、味はこうだったと状況報告をしつつ、課題や解決策をまとめました。
まだ社員でもない私に出張を許可して交通費を出してもらう以上、当然の行動だと思っていましたが、会社側は驚いた様子でした。“居酒屋のおばさんが丁寧なレポートを出すなんて”、と」
この熱心さが評価され、「企業再生の力になってほしい」と誘われることに。2017年、藤﨑さんが50歳のときでした。
「39歳から働き始めたのは生活のため。当時は夫が病に倒れ、息子もまだ学生だったので、家計を支えるのが原動力でした。
それが、ドムドムハンバーガーに誘われたときは夫が亡くなり、息子も社会人に。自分にとっての仕事のやりがいや可能性を考えられるタイミングだったので、新しい挑戦を決意しました。
最初はアドバイザー的な立場の契約でしたが、4か月後には正社員となり、本腰を入れて働くことになりました」