思いもかけなかったNHKからの講師依頼に…
── ここでも求められたことに全力で取り組んでみたら、新たな道が開けたのですね。
ウメチギリさん:
そうですね。さらにその後、NHKのディレクターさんから、情報番組で「講師をしませんか」と依頼が来ました。
ちぎり絵の講師を探しているなかで、私のHPを見つけて連絡をくれたそうです。
とても嬉しいお話でしたが、疾患のある小さな娘を置いて東京での撮影に行くわけにもいかず、一度はお断りしたんです。でも私の作品は唯一無二だからと、撮影クルーが山形に来てくださって。
── どういう点が「唯一無二」だと?
ウメチギリさん:
当時、ちぎり絵といえば、水彩画のように風景や花を描くものが主流でした。
私の作品はハートや動物などちょっとポップで可愛らしいモチーフが多かったんです。そこにオリジナリティがあると。
それまで教室で学ばず自己流でやってきたことに、どこか引け目を感じていたんです。けれど、作家として堂々と世に出て良いと、背中を押してもらった気がしました。
そこからまた大手出版社などとの新たな仕事が展開していき、いまがあります。
ちぎり絵作家として活動するなかで、また以前の養護学校に関わるようにもなりました。
作業訓練で行うコーヒーのパッケージ制作をしたり、ちぎり絵講師として授業に招いてもらうことも。長い時間を経て再びご縁をいただくと、人生はすべてつながっているように思えてきました。
PROFILE ウメチギリさん
ちぎり絵作家。養護学校勤務を経て、2002年から自己流でちぎり絵制作を開始。2010年NHKまる得マガジンの講師を務める。挿絵、装丁、チラシ、ポスター、パッケージなど手掛ける。
取材・文/木村和歌菜 画像提供/ウメチギリ