── 思い入れのある絵を変えることに、お父さまは反対されませんでしたか。

 

有井さん:
父はそうでもなかったですね。「お菓子の魅力が伝わるならいいじゃないか」と。

 

むしろ母のほうが、「お父さんが大好きな頼朝さまの包装を変えるなんて」と当初は反対しました。それを見越して、後戻りできないところまで話が進んでから報告したのですが(笑)。

 

── 本店は鶴岡八幡宮の目の前ですし、土地柄、鎌倉殿をパッケージから外すのは反対したくなる気持ちもわかります。

 

有井さん:
そうですね。「紅谷」は、初代である祖父と、その弟子だった父が、1954年に今の本店がある場所で立ち上げた店です。

 

本店があるのは北条泰時の小町邸跡地 。25年前に店を立て替えたときにも、発掘調査でいろいろな遺品が出てきました。隣の建物の奥では、 発掘された地層が保存され、無料で公開されています。

 

北条泰時の小町邸跡地に建つ鎌倉紅谷の本店
北条泰時の小町邸跡地に建つ鎌倉紅谷の本店

おっしゃる通り、そんな環境下で鎌倉殿を外すのは苦渋の決断でしたが、お菓子の魅力がより伝わること以外にも、パッケージ変更には 「過剰包装を簡素化する」という利点もありました。

 

鎌倉殿のパッケージのときは、二重三重に包装をして紐で括るという工程があり、コストも手間もかかっていました。エコが叫ばれる時代を背景に、どうなんだろうという思いがあり、最終的には母にも賛成してもらえました。