「いい教師に出会わなかったから」教師の道へ
子どもたちの自律性を尊重する学校づくりの背景には、田畑校長自身が、自己決定を繰り返しながら生きてきた人生が影響していました。
「私は秋田県出身なんですが、昔から東京に憧れがあって。両親は上京に大反対していたけれど、なんとか説得して中学卒業と同時に双子の兄と上京しました。
朝日新聞の奨学制度を利用して、新聞配達をしながら高校3年間を過ごしたんです。
朝4時起きで雨でも雪でも新聞配達。土日も集金に行っていたから、大きい声では言えないけれど、授業中はスイミン(睡眠)グボーイでしたよ(笑)。
母は『苦労かけて悪かったね』といまだに言うけれど、苦労をかけられたなんて思ったことはありません」
自分が選んで決めた道だからこそ、困難に直面しても他責することはないのだといいます。
新聞配達と勉強を両立し早稲田大学に進学した田畑校長。卒業後は、教職の道を選びました。
教師になった理由は「自分の学生時代、人生に刺激を与えてくれるような先生と出会えなかったから」なのだとか。
「子どもたちに、出会えてよかったと思ってもらえる先生に自分がなろうと考えたのが、教職を目指すきっかけでした」と、笑顔を見せます。
自分自身の経験を糧に子どもたちと向き合い、学校づくりに奔走する田畑校長。その根底には、どんな困難に見舞われても、生き抜いていく力を育んで欲しいという願いが込められています。
取材・文/白石果林 撮影/新井加代子 画像提供/新方小学校