休み時間にはつねに子どもたちが校長室に来て話をしたりゲームをしたりする

「校長先生、お祭りを学校でやろうよ」「お、いいね」そんなフランクな会話から、イベントが実現する公立の小学校があります。子どもが野菜を育てて保護者に売るのもこの小学校の日常。温かい眼差しを送り続ける田畑栄一校長に、その狙いについて聞きました。

学校は「子どもが居心地の良さ」を感じる場所

越谷市立新方小学校では、子どもたち一人ひとりが主役。「すべての子どもにとって居心地の良い学校」を目指し、子どもの声を教育課程に反映させています。

 

「次年度の教育計画を立てる際、子どもたちに『何がやりたい?』と聞いているんです。子どもたちは自由にやりたいことを考えて、それを実際に授業に取り入れていきます。

 

昨年は、子どもたちが『コロナを撃退したい』と、タイの伝統的なお祭りを真似した水かけ祭りを企画しました。

 

校庭でみんな水着になり、手作りの水鉄砲を使って大盛り上がりでしたよ。

 

そのほか、保護者を招いた秋祭りや文化祭ではダンスや音楽、教育漫才、実験など、好きなテーマを選んで各ブースで発表。直近では、ハロウィン学習発表会を企画しています」

 

8年前に田畑校長が始めた教育漫才は大きな反響を呼んでいる

子どもたちは、自分の「好きなこと」「やりたいこと」に耳を傾け、先生の協力のもと、それを形にしていきます。

 

与えられたことを言われるがままにこなしていく、従来の学校教育の姿は新方小にはありません。

 

複数人いた教室渋り(教室に行くのを嫌がる児童)も、今ではいなくなりました。教育は規律と寛容さのバランスが重要だ、と田畑校長はいいます。

 

「小学校は、子どもたちが自分の良さや好きなことを見つける場所であり、笑顔を育む場所です。

 

たとえば読書感想文のような課題も、やりたくない子にはやらせません。コンクール(出来栄えを競うイベント)の課題に取り組むかどうかは、子ども自身の選択制で良いと考えています。本を読むのが好き、読書感想文を書きたいという子がやればいいんです。

 

読書感想文のねらいは『書くことで考えを深める』こと。読書ではなく他のテーマでやっても、身につく学びだからです。

 

自分が好きなことをテーマにしたほうが、みんな熱心に楽しんで学ぶんですよ。子どもたちがこの先、自己選択・自己決定できるよう、教育のあり方も変えていかなければいけません」