田園地帯にポツンとたたずむ越谷市立新方小学校。のんびりとした地域で育ち、自分の考えを表現することに消極的な子どもが多かったそうですが、表現力を鍛える授業を展開すると、子どもたちの学力に大きな変化が。その秘密を田畑栄一校長に伺いました。
苦手な友だちとも仲良くなれる教育漫才の狙い
「本校は農村地域にある小学校です。自然豊かな場所ですが、近隣には自力で行ける塾もあまりなく、駅近の小学校と比較すると学習環境が違います」と、田畑校長は話します。
しかし、国語や総合の時間に「教育漫才」や「意見をつなぐ学び合い(友だちと関わり合いながら学びを深める授業)」を取り入れると、授業はみるみるうちに活性化。
先日実施された全国学力・学習状況調査では、6年生の正答率が全国平均を大きく上回る成果を出しました。
授業が活性化した背景のひとつにある「教育漫才」。クラスメートとコンビを組み、ネタづくりからネタ発表までを行う授業で、国語や総合の時間を用いて行われます。
教育漫才を始めるにあたり定めたルールが、授業の活性化に深く関係しているそう。
「どつきなどの暴力、『きもい』『死ね』などの暴言禁止のルールを設けています。
教育漫才では、朗笑(あたたかい笑い)を求めていることを説明し、人を馬鹿にするような冷笑はやめようと約束をするんです。
この意識が、日常生活や授業に変化をもたらしました。友だちをちゃかす雰囲気がなくなり、子どもたちのなかに安心して発言できる心の余裕が生まれたんです。
人前で発言するのが怖くなくなり、先生の話を聞いて板書するだけだった授業も、活発に意見が飛び交うようになっていきました」
教育効果は学力アップだけではありませんでした。コミュニケーション力が向上し、創造性や語彙力も磨かれていくのだといいます。
「教育漫才のコンビ・トリオはくじ引きで決めるため、話したことがない友だちとコンビを組む可能性も十分にあります。
最初はぎこちなくても、徐々に関係性を築き始めてお互いの共通点や好きなモノ・コトから、ネタをつくっていく。そうやって、議論を重ねるうちに息が合ってくるんです。
また子どもたちは、ネタづくりのために、さまざまな場面でアンテナを張るようになります。
日常生活や授業中に見つけた気になるモノ・コトをうまくネタに落とし込み、キャッチーなフレーズや配慮ある言い回しに変換していく。
ネタ発表に至るまでのこの過程が、子どもたちにとって大切な役割を果たしています」