仕事に家事に子育てに、日々邁進するイラストレーターの横峰沙弥香さん。自宅が仕事場だからこその楽しみや苦労、仕事を捗らせる工夫などを、ちょっと笑えて癒やされるイラストとともに紹介します。今回は「夫が不在の生活」について、今の心境とともに語ってもらいました。
2年前の感謝の気持ちを忘れていた…まさか製氷機の氷に気づかされるとは
氷が無くなりました。
転移性肝腫瘍の手術のため、2年ぶりに夫が入院して1週間と少し。
2度目ですし、前回ほど身体への負担は大きくない手術ということで、少しラクな気持ちで挑んだ入院ではありましたが、ワンオペ生活のなかで細かく細かく「夫の不在」を感じさせる出来事が起こります。
なかでもことさらショックだったと言いますか…私はこんなところでも夫に寄りかかっていたのだなと改めて感じさせられたのが、氷。
共働きのわが家では家事全般を私が担当しており、子どもたちの送り迎えなどを夫がこなしています。
家事全般が私、とはいえ、ポンコツな私には、日用品のストックの減り具合の確認と補充がとにかく苦手という壊滅的な弱点がありまして…。
それに気づいた夫が次第にトイレットペーパーやゴミ袋を買いたしたり、シャンプーやコンディショナーの残量をチェックしてくれるようになって、わが家はそれでうまく回っていた。
製氷機に水を入れていてくれたのも夫です。
いつも氷で満たされていたはずの場所に氷がない。ああ、夫がいない。
度重なる私のポカミスを笑って流し、恩着せがましいことも何も言わず、水を補充し続けてくれていた夫の優しさを思って私は夜中ひとりで泣きました。
2年前にあれだけ互いの存在のありがたさを片ときも忘れないようにしようねと感謝し合ったにもかかわらず、少し時間が経てばそんな気持ちも麻痺しかけていた。
「氷にそれを気づかされるなんて」と自分に喝を入れながら、私は製氷機を水で満たしたのでした。
文・イラスト/横峰沙弥香