「自分の考えを言える」子どもが15%増えた

教育漫才を始めたきっかけのひとつは、一部の児童しか授業に参加していない学校教育の現状に直面したことでした。

 

小学校長に着任する前、教育局東部教育事務所で指導主事を務めていた田畑校長。多くの学校に足を運び、いくつもの授業を見てきました。

 

そこで目にしたのは、ごく一部の児童の発言により展開される授業の多さ。

 

小学校長に着任後、田畑校長は「意見をつなぐ学び合い(友達と関わり合いながら全員が意見を述べ、学びを深める授業)」を展開しますが、「自分の意見を述べられている」と実感する児童はなかなか増えませんでした。

 

そんな状況に危機感を抱き、「表現力」や「伝え合う力」を意図的に育むことが必要だと痛感。

 

さらに、周りを恐れずに発言できるあたたかい雰囲気をクラス、ひいては学校全体に醸成しなければならないと感じ、方法を模索し始めます。

 

そして目をつけたのが、あたたかい笑いが生まれ、コミュニケーション力も鍛えられる漫才だったのです。

 

「子どもにとって学力向上はもちろん大切なことですが、小学校教育の一部でしかありません。

 

今の小学校教育には、人としての根っこの部分(自己肯定感・自己効力感)を育てることが求められています。社会に出たときや困難に見舞われたとき、乗り越えられる力を育んでほしい。

 

そのためにはまず、自分の気持ちを伝える表現力や、コミュニケーション力を高めることが必要だと考えました」

 

漫才の知識・知見がなかった田畑校長は、ある芸能事務所に協力を仰ぎます。思いを伝えると、先方は快諾し、教育漫才がスタートすることになりました。

 

教育漫才を取り入れて3年が経った平成29年度の児童アンケートでは、「自分の考えを言えましたか?」の質問に、「はい」と回答した子どもが85%に。教育漫才を取り入れる前と比較すると、15%以上もアップしています。

 

また、「学校は楽しいですか?」の質問に「はい」と回答した子どもは94.7%にのぼりました(平成26年度は85.7%)。