“いじめとケンカの違い”を子どもも考える
毎年6月と11月ころに、学校内で開催される教育漫才大会「N-1グランプリ」。年2回、この時期に大会が開催されることにも意味があるそう。
「6月と11月は、いじめなどの問題が起きやすいとされる時期です。同質集団の中でなれ合いが進み、トラブルが起きやすい。
いじめや不登校で苦しむ子どもを出さないためにも、教育漫才を通じて何を学んでほしいのか毎年伝え続けています。
また、私から全児童に向けて話す校長講話では、いじめとケンカの明確な違いを伝えています。
『友だち同士、1対1でぶつかることはどこに行ってもある。だけど、2対1だったり、長い期間だったり、本人が苦しい思いをしているなら、それはケンカではなくいじめだよ。もしいじめが起きたら、先生たちは100%被害者の味方だからね』と。
もちろん、加害者も大事な子どもです。太陽に向かって咲く向日葵のように、すべての子どもを支えて、育てていきたいのです」
そのとき田畑校長は朝礼台の壇上からではなく、子どもたちと同じ高さで目線を合わせながら話すといいます。
「壇上から見下ろし・見下ろされる関係は、教師が上で子どもが下のような心理関係を生む恐れがあります。そうではなく、同じ人としての話していることを示したいからです。
年齢や上下関係などの垣根がなくなって初めて、子どもたちも私たち教員に本音が言えるようになると思います。
苦しいときにちゃんとSOSが出せるよう、ふだんからの関係づくりを意識しています」
各教室では担任の先生が、田畑校長の話をベースに「いじめの定義」や「なぜいじめがいけないのか」を子どもたちに再度伝えます。
これを繰り返すことで、子どもたちの意識にも変化が生まれ始めました。
「ある先生から言われたんです。トラブルが起こっても、子どもたちが『これはケンカ?いじめ?』『それは校長先生がだめだって言ってたよ!』とみずから話し合うようになったと。
どういった行為がいじめにあたり、なぜ悪いことなのか、子どもたち自身が考え理解することで、やっとあたたかいコミュニケーションや人間関係が生まれるのだと思います」
取材・文/白石果林 撮影/新井加代子 画像提供/新方小学校