ピアノ上には華やかな演出としてつねに深紅の薔薇の花束が置かれている

金髪を振り乱し、ゴージャスに人気曲を弾きこなす動画が人気の五条院凌さん。ピアノ上にはつねに薔薇の花束。TikTok開始3か月でフォロワー15万人の心をつかみ、今年2月の初挑戦に続き、2度目のTEPPENピアノ対決に挑むまでの軌跡を追います。今回は、五條院さんご本人の「特徴的な表現をそのまま」にリアルなメッセージとしてお届けします。

テレビ出演で人気が出るなかでの葛藤もある

── 今年2月のフジテレビ系「芸能界特技王決定戦TEPPEN2022冬」初出場のピアノ対決では注目が集まりましたね。本番5日前に小指の爪が剥がれるなどトラブルを乗り越え、鮮烈なテレビデビューを飾りました。

 

五条院さん:おテレビに限らず、本番前は毎回いろいろあるものです。

 

でも当日は五条院凌らしいパフォーマンスができましたので、お満足でございます。番組の決勝戦では、Ado様のお『うっせえわ』をおアレンジして全力で弾かせていただきました。

 

すべてに敬意を払い、品位を大切にしながらお話するのがわたくしの流儀でございます。初めての方にもそうご理解いただければと。

 

──「おファン」のように相手を尊重し、丁寧に語られるところですね。読者にもその心づかいは通じると思います。さて「TEPPEN2022冬」の結果は大接戦でした。ネット上ではさまざまな意見が飛び交いましたが、ご自身のお気持ちは?

 

五条院さん:意外に思われるかもしれませんが、本当はわたくし、音楽で闘いたくないのです。

 

皆様それぞれ良いところをお持ちですし、人生をかけて音楽に向きあっている方々ばかりです。

 

それに、おアートは良し悪しを数字で表現できるものではございません。非常に崇高なるものなのでございます。

 

でも、そんな葛藤を抱えながらも勝負に挑んでいるわたくしをみて、勇気や希望を抱いてくださる方がおられるのなら、挑戦してみようかしらと思ったのです。

 

── この出演により、周囲で変化はありましたか?

 

五条院さん:放送後はInstagramで1万5000人、Twitterで6000人、YouTubeは2万人ほどおフォロワー様が増え、メディアの影響力を感じました。

 

昨年末のお初お生おコンサートは20人程度のお客様でしたが、放送後は500~600人のホールが満員になり、大変うれしく存じます。

「5秒勝負」TikTokで見てもらい続けるための工夫

── 2021年4月「麗しいピアノの音色を世に届けるため、五条院凌としてTikTokの世界に降臨」され、MXTV「五時に夢中!」を経て3か月でフォロワー15万人超えの快挙。その後TEPPENピアノ対決等に出演し、注目を集めました。この経緯を教えてください。

 

五条院さん:自分の演奏をより多くの方に聴いていただける場として、おヤングの皆様のあいだでとても流行っているTikTokを選びました。

 

最初の2本は演奏なしのイメージ動画を公開し、3本目でAdo様のお『怪物』を弾き、その後続々と演奏動画を披露してまいりました。

 

主にSNSで人気の曲やおファン様からのおリクエスト曲などをリサーチしておアレンジしています。

 

Ado様のお『うっせえわ』におショパン様のお『幻想即興曲』を取り入れた作品は大きくおバズいたしました。

 

── TikTokは10~20秒のコンテンツを次々と駆け足で観られるコンテンツですが、どんな工夫をされているのでしょうか?

 

五条院さん:TikTokのようなおスワイプ中心の世界では、音楽も大切ですが「これは何⁉︎」と目をとめてもらえるような要素が必要です。

 

企画・撮影・編集はすべて自分自身で行っております。 “笑い”や“驚き”のおエッセンスをひとつ入れることが肝心です。

 

そのためにも演奏に加え、お衣装やアクションなどで魅せる研究も欠かせません。

 

とくに、TikTokは短ければ短いほど良いとされる世界。いわば最初の5秒間に“おサプライズ”や“何か起きそうな予感”で惹きつけなければ見てもらえません。

 

これは、表現すべてにおいて言えることかもしれません。おコンサートでも、登場から既におパフォーマンスは始まっているのです。

 

髪一本一本やからつま先まで“麗しい世界”でいるようこころがけています。

 

── たしかに、今日の撮影も研究しつくされた完璧なお姿でした!

 

五条院さん:小さい頃からおクラシックバレエをたしなんでおりますので、凛とした姿勢や“魅せる”ことに細心の注意を払っております。

 

お衣装選びやヘアメイクもわたくし自身で行い、曲のお稽古中も必ず撮影して最も美しく映る姿を日々追求しています。

 

とある動画撮影で、激しい演奏のため髪がピアノの上の薔薇にあたり、薔薇が床に落ちてしまうおハプニングがございました。

 

最初は撮り直そうと思っていたのですが、偶然の出来事も表現において重要なエッセンスのひとつだと思えてきて、撮り直さずにそのままアップしたのです。

 

観てくださる方はたいそう喜んでくださいました。このような奇跡的な偶然の積み重ねによっておパフォーマンスのアイディアが生まれるのです。

アニメ曲の演奏で海外のファンが急増!

── 人気曲の『うっせえわ』アレンジでも最後に薔薇が宙を舞いますね。「魅せる」「惹きつける」ことに心血を注いで五条院凌の世界を作り上げていますが、視聴者の反応はいかがですか?

 

五条院さん:TikTokやYouTubeにたくさんのおメッセージをいただき喜びを感じますが、やはりお生コンサートで実際にお生で音を感じていただけるお幸には敵いませんわ。

 

主なおファン様層は、おギャル様(女性ファンの呼称)が8割です。ご一家、おカップルでいらっしゃる場合も。

 

ステージから客席を見渡すと、ヤングなおギャル様やおメンズ様方が結構いらっしゃるのですが、わたくしの音を感じて、いろんなアイディアやヒントを与えられたら、というおアツな気持ちになってしまいますわ。そして、お可愛い。

 

── 多くの世代に人気なんですね。また、海外のファン向けにはそれぞれの言語で発信されているようですが。

 

五条院さん:翻訳機能を使って、わたくし自身で英語、韓国語、タイ語などのワードも入れて発信することもあります。

 

アニメ関連曲のおアレンジを投稿したときは、外国語のおコメントがばーっと増えて驚きました。

 

どうやら、アニメ・漫画おファン様の方々の間で盛り上がったようです。

 

海外のおファン様方との交流や、現地での演奏が実現できればと思います。夢は、美しさとおゴージャスを極めたベルサイユ宮殿でお生おコンサートを開くこと。

 

皆様も是非一度、麗しいピアノの世界をのぞいてみてくださいませ。今日はこのような機会をいただき、メルシー御座いました。

 

PROFILE 五条院 凌さん

2021年4月にTikTok開始。活動開始3か月でフォロワー15万人を達成。テレビ番組出演や各地でコンサートを行う。ミニアルバム「Gojolous」「Marvelous」発売中。
 

取材・文/岡本聡子 撮影/富本真之 写真提供/ワールドアパート有限会社