運転上達には具体的な目的を
── ペーパードライバーを卒業するために必要なことはなんでしょうか。
佐藤さん:
免許を取得するための自動車学校では1回あたり2時間の教習で、生徒さんもたくさんいらっしゃいます。自動車学校では基本的に目的地にまっすぐ行って帰ってくるのですが、生活のなかでの運転にはさまざまなケースがあります。
例えば、自宅から友人宅に寄って、一緒にレジャー施設に行き、帰りは時間短縮のために首都高を通って帰ってくるというように、生活に根ざした運転ができなければ、運転ができたとは正直言えません。
運転をしたい方は具体的な目的を持つといいと思います。目的があるほど、技術も向上します。
ペーパードライバー講習では、いつでもどこでも行けるように指導しますが、具体的な目的地が決まっている場合は、実際の道で練習をします。免許取得と違って、卒業というのはその方が安心して運転できるようになったときのことを指します。
受講後に連絡をいただくようにして、どうでしたかとフィードバックもします。最初はみなさん緊張していますが、連絡をいただくときには不安がなくなって喜んでいらっしゃいますね。
── “あおり運転”がニュースになることも増えました。
佐藤さん:
もちろんあおる方が悪いのですが、ペーパードライバーや運転が苦手な方が“あおられないようにするコツ”もあります。
もし自分がミスをしてしまったら、必ずハザードランプを出して謝罪やお礼を伝える。運転では、法律上こうだからというだけではなく、暗黙の理解でお互いに嫌な思いをしないようにするための配慮が必要です。
「今ちょっと急ブレーキ気味だったので、ハザードランプを出しましょう」と指導しますが、マナーの面でのルールを守っていかないと、自分も相手も運転していて楽しくありません。どうぞと譲ったり、頭を下げたりすることも、相手の方は必ず見ていますので、アイコンタクトを多用して、楽しく運転していただけたらと思います。
ドライブレコーダーは、もちろんつけていただいたほうがいいですが、それがあるから安心というわけではありません。基本的に事故の際の証拠として使うもので、事故になる前にどうするかの意識が最も重要だと思っています。
PROFILE 佐藤徳考さん
JAペーパードライバー協会会長、東京ペーパードライバー教習所所長。ペーパードライバー指導歴20年で、これまでに5000人以上のペーパードライバー卒業の指導を行う。苦手意識克服のコツや運転技術の指導でのメディア出演も多数。
取材・文/内橋明日香 イラスト/まゆか!