さまざまな年齢層の人が働く職場のひとつとして知られるコンビニ業界。障がいのある人たちが活躍する環境づくりで成果を上げてきたのが株式会社ファミリーマートです。2017年に取り組みを本格化させてから、見えてきた課題に向き合い、実現してきた職場環境の変化や気づきをサステナビリティ推進部ダイバーシティ推進グループマネジャーの北原和佳さんにお聞きしました。
障がい特性を活かして働くための専門組織で障がい者雇用を本格化
── ファミリーマートの障がい者雇用率は2022年6月1日時点で2.51%時点と、法定雇用率2.3%を上回っています。2017年に障がい者雇用の取り組みを本格化させてから、障がいを持つ方の特性にあわせた活躍の場の拡充などを進められてきましたが、その背景を教えてください。
北原さん:
ファミリーマートでは2020年、「ファミリーマート人権方針」を制定しました。これは、国内外を問わない普遍的な価値観として「人権尊重」の重要性を姿勢や取り組みを通して示していくものです。法務省が推進する「Myじんけん宣言」にも賛同していて、誰もが人権を尊重し合う社会の実現を目指し、全社あげて意識の向上などを図っています。
主な行動としては、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとして、誰もが働きやすい、よりインクルージブな職場づくりを実現するため、障がい者雇用などを積極的に推進しています。
── 具体的にはどんな背景があって障がい者雇用を始めたのでしょうか。
北原さん:
取り組みを始める2017年までは、身体に障がいを持つ社員の方はいましたが、精神障がいや知的障がいを持つ方の採用は進んでいませんでした。ダイバーシティが重要視され始めたことから、障がい者雇用に力を入れるようになりました。
しかし、「雇用しさえすればいい」という考えでは意味がありません。「働く人自身が納得できるかたちで活躍し、自立を目指してほしい」という思いを込めて取り組みをスタートさせました。
本人が思う強みと弱みが、会社側から見ると違う!?
── 障がい者雇用を推進するなかで課題になったことはありますか?
北原さん:
メンバーの人数が増えたからこその課題だと思いますが、指示やコミュニケーションをスムーズに行うための方法を考える必要性が出てきました。そのため、障がいの特性など専門的な知識がある支援員がフォローする体制をつくりました。
── 障がい者雇用では特性を活かすということですが、得意なことで仕事の成果を出すために苦労したこと、また職場環境で工夫していることはありますか?
北原さん:
ご自身が思っている強みと弱みが、会社が客観的に評価したことと大きく違うことがよくあります。
会社が評価するスキルをご本人は弱みだと思っていたり、逆にご本人が向いていると思っていた業務は会社から見ると逆の評価になっていたりすることが起きます。ファミリーマートでは採用を決める前に必ず実習をしており、まずは想定する配属先の業務を体験してもらうことでアンマッチの解消につなげています。
例えば、ご本人は事務職を希望しているけれども、実は長時間座っているのが苦手で1時間に1回くらい身体を動かしたほうが良いパフォーマンスが発揮できるという方も多いんです。
そういう方々には1時間ごとに備品の整理といった他の仕事をしてもらうなど、リフレッシュの意味も込めて業務をいくつか担当してもらう工夫などをしています。実際にその方法で始めてみると、ご本人も自分にとっての働きやすさに気づくことがあるようです。