俳優でも音楽の先生でもない!見えてきた私の道

退団後は、ロンドンやニューヨークなどへの海外旅行、大阪芸術大学通信教育部の音楽学科に入学し、歌の勉強を始めるなど、新たな挑戦をします。

 

「在団中から、やりたいことが山のようにありました。でも、現役の頃は忙しく、なかなか時間が取れませんでした。

 

だから、“退団したらあれもしよう、これもしよう”と心に温めていたものすべてに取り組みました」

 

宝塚以外の世界に足を踏み入れて、「改めて実感することがあった」と言います。これまで憧花さんが培ってきた歌や芝居は、宝塚歌劇団ならではの独特なものだったのです。

 

「大学で専門的に歌を学んだ際、とくに思ったのですが、宝塚の歌はポピュラーなポップスやロック、ジャズとは表現方法が異なるんですね。

 

男役は女性でありながら低い声で歌う、娘役は男役にキーを合わせるなど、特殊な部分が多いです。

 

退団後、音楽教室で教える経験もしました。そのなかで、一般の音楽を専門に学んだ先生たちの勉強量や知識量にはかなわないと思い、この分野で生活をしていくのは大変だと感じました。

 

また、宝塚のOGは役者として活躍する人もたくさんいます。とても素敵だと思う一方で、私自身が取り組む姿を想像すると、一般女性としての経験が足りない気がしてしまって…。

 

もしこれから普通の女性を演じるとして、自分で納得できる演技ができるようになるには、10年以上かかる気もしました。

 

それに舞台では、役を得るための競争があります。かなり精神的に強くないと、自分のペースを保つのが難しいんです。その厳しい世界で今後も生き続けることはしんどいと思いました」

 

こうして退団後、さまざまな世界を見た結果、憧花さんは次の道を模索するように。同時に、「自分にとって一番大事なのは宝塚歌劇団」といった思いも、募ってきました。

 

移転開業する宝塚ホテルから「支配人になってほしい」と依頼があったのは、ちょうどそのタイミングでした。