寝かしつけと仕事を両立したくて「液晶タブレット」に挑戦

── すごく繊細で優しいタッチの絵柄ですよね。紙とペンで描かれているのですか?

 

田辺さん:
いえ、今は液晶タブレットやソフトを使って描いています。もともとは手描きだったんですが、娘が赤ちゃんの頃は寝かしつけても私が離れると泣くので、隣にいて作業しないといけない状況が多くなって…。タブレットならなんとか横にいて漫画を描くことができたので、そこからデジタルになりました。

 

子どもが生まれたのがきっかけで、作業環境も変わりました。担当の方からは「アナログのタッチはなくさないほうがいい」とアドバイスをいただいたので、意識しつつ描いています。

 

田辺ヒカリさんが描いた、海に来たのに不機嫌そうなお子さん
せっかく海に来たのに不機嫌そうなお子さんをイラストに

── アナログからデジタルへの移行はスムーズにできましたか?

 

田辺さん:
本来、デジタルは苦手なタイプなので…(苦笑)。周りに漫画家の友達もいないから、テキストを買って試してみたり、ネットで調べたりしながら手探りで描いていました。最初は担当の方にもかなりご迷惑をかけたと思います。

 

── そういった状況でもやっぱり漫画を描きたいという気持ちがあったんですね。

 

田辺さん:
ありましたね。でも迷いもあるんです。「お母さんここでいるから、寝てね」ですんなり寝てくれればいいのですが、娘はまだ夜中に目が覚めることがあって。

 

夜中に仕事をしていても、余裕があれば寝かしつけができるんですが、なかなかそうもいかないんですよね。グズったときに、子どもを泣かせてまでやる仕事なのかな…って、自分のなかで葛藤したこともあります。コロナの感染が拡大したときは両親や義実家にも預けることができなかったから、特に悩みましたね…。

 

── 夫婦で協力して乗り越えるしかない状況だったのですね。旦那さんは家事や育児にどんなふうに関わっていますか?

 

田辺さん:
夫が仕事から帰ったらすぐに娘の世話をしてくれています。夫に支えられている部分は大きいですね。とはいえ、夫は会社員なので、まったく違う業種。夫には私から「締切りがいつで、いつまで忙しい」っていう状況をきちんと伝えないとわからないので、連絡を密にするようにしています。

 

PROFILE 田辺ヒカリさん

​漫画家。『ひとりごはん』(少年画法社)などのアンソロジー漫画雑誌で猫漫画やグルメ漫画などを連載。2017年12月女児を出産。Twitter、Instagramでも育児漫画を配信中。

 

取材・文/池守りぜね 画像提供/田辺ヒカリ