「出産がプラスになった」ママアスリートとしてメダルを目指す

── オリンピック後に競技を引退しなくて良かったと思いますか?


金城さん:
今は辞めなくて良かったと思っています。オリンピックのときは、確かに金メダルを獲れたけれど、完全燃焼できた感じはなかった。とはいえ、結果が良かったから、ここが辞めどきだろうって思っていたんです。

 

でも決勝が終わった瞬間は、「自分はまだこんなもんじゃない」っていう気持ちもあって。


オリンピックへの道のりの厳しさを味わってきたぶん、簡単に「次も頑張りたい」とは言えなかった。レスリングは辞めたくないけれど、どうしよう…そんな複雑な気持ちでした。そんなときに妊娠が判明したことがきっかけで、自分の「まだレスリングを続けたい」という本心に気づけたんです。

 

合宿中にお子さんを抱っこする金城さん
合宿中にお子さんを抱っこする金城さん。すっかりママの表情

── そこからママとして競技を続ける道を選んだと。

 

金城さん:
母親という今の立場で、オリンピックを目指すというのは誰でもできることじゃない。誰もやっていないことをやることに意味があるんだと思っています。

 

── 出産がプライベートだけでなく、競技人生においてもプラスになったのですね。

 

金城さん:
そうですね。子どもはめちゃくちゃ可愛くて、産んだことには何の後悔もないし、今までとは違った形でレスリングを続けてオリンピック目指せるのは、純粋に嬉しいことだなと思います。

 

── お子さんが興味をもてば、レスリングを教えたいですか? 

 

金城さん:
娘が生まれる前はレスリングをやらせるのは嫌だったんです。「金メダリストの子ども」という見られ方をすると、本人がレスリングを楽しいと思えなくなってしまうんじゃないかと思って。

 

でも育児をしていくなかで、わが子がマットの上に立っているの想像したら…「めちゃくちゃ可愛い!」って思えてきて(笑)。本格的にレスリングをやらなくても、子どものうちは、体づくりの一環で一緒にできたら嬉しいですね。

 

PROFILE 金城(旧姓・川井)梨紗子さん

石川県出身。レスリング選手として、2016年リオデジャネイロオリンピック63キロ級、2021年東京オリンピック57キロ級にて優勝。プライベートでは、昨年結婚、出産し現在は女児のママ。
 

取材・文/池守りぜね 画像提供/金城梨紗子