「やりたいことがあるなら出世しなさい」に疑問

── 職員としての仕事もあるのに、なぜそこまでできたのでしょう。原動力は何だったのでしょうか。

 

高橋さん:
私自身、市役所職員になって14年目ですが、横須賀市長の秘書として5年間働いていた時期があります。

 

市長の側で仕事をするなかで、物事の考え方や進め方など多くの学びがありました。大きな権限を持つことで、自分の想いの実現ができることも肌で感じました。しかし一方で、そうではない部分も多々あり、組織で働く場合によく言われる「やりたいことがあるなら出世しなさい」という言葉に疑問を感じました。この疑問は、自らが横須賀市役所職員として果たすべき目標に対する、大きな悩みとなりました。 

 

そんななかで、2018年の広報戦略研修で街の人たちの生の声を聞いて、「人の声を聞くことの大事さ」を仕事に活かすことが、秘書時代からの歯がゆい気持ちを解消する答えの一つなのかも、と決意を固めました。

 

── 法人を立ち上げる際、市役所内で反対などはありましたか?

 

高橋さん:
特に反対は感じませんでしたが、「本業に支障が出ないのか」といった声は予想していました。そこで、本業以外の時間、つまり終業後や休日の時間での活動に制限することだけでなく、人事課と週の労働時間を決めて誓約書を作成するなどをしました。

関わる人や企業が「稼げる仕組み」をつくる

── KAKEHASHIでは、地域の特産品の販売、教育福祉の支援など5つの事業が柱になっていますが、事業で最も大切にしているのはどんなことですか?

 

高橋さん:
関わってくださる方や企業が稼げる仕組みをつくることです。

 

私たちは、強い想いをもって新しい可能性を切り拓く方々と仕事をしたいと思っています。だから、ビジネス視点で稼ぐことは譲れませんでした。そんな想いを丁寧に伝えていくことで、普段なかなか出会えない人ともKAKEHASHIだと未来を見据えた話をすることができています。

 

KAKEHASHIでは、もちろんビジネスにならない提案はしません。稼がなくていいんだったら、公務員の立場でやりますから。

 

KAKEHASHIが地元野菜を直接消費者に販売する事業を行う様子
地元野菜を直接消費者に販売する手伝いも。一番右が高橋さん