KAKEHASHIの活動をなくせる社会にしたい

── 設立から2年ですが、今、ご自身の想いの実現に近づけていますか?

 

高橋さん:
稼げる仕組みづくりについては、期待できる事業が育ってきています。

 

たとえば、話を聞く活動の中で、横須賀市内にある、国内外で活躍するケーキ店の方と出会いました。ケーキに使用する果物などを全国から直接取り寄せるなどの強いこだわりを持つ方でしたが、横須賀出身でないことから、地元の果物や野菜などを使いたくても農家の方と出会う機会がないという悩みを抱えていました。

 

食材の生産地が近いことは最も旬な状態で収穫されたものを使用できる、という大きなメリットがあるようなんです。そこで、生産に強いこだわりを持つ地元農家とおつなぎしました。

 

ケーキ店にとっては、美味しい食材を使用したケーキを作ることができる。農家にとっては、野菜や果物の美味しさがケーキ店を通じて国内外に届けることができる。両者の価値創造となる取り組みとなっています。
 

 

そのほかにもKAKEHASHIでは、形がいびつな野菜などを使用した無添加・無着色の野菜ピュレが売れ筋商品ですが、本当なら規格外として価格が低下するところを私たちが農家から適正価格で購入し、ピュレの材料にしています。これは、野菜の廃棄や価値の低下などの課題解決につながっています。

 

規格外のかぼちゃやにんじんを使った無添加・無着色の野菜ピュレ「SUCOYACA Puree」
規格外のかぼちゃやにんじんを使った無添加・無着色の野菜ピュレ「SUCOYACA Puree」。開発に際し600人以上にアンケート調査を行った

── 今後も、職員の仕事とKAKEHASHIの活動を続ける予定ですか?

 

高橋さん:
KAKEHASHIの仕事は、KAKEHASHIでやらなくてもいいんだったら本当はやりたくないんです。

 

本来の職務である横須賀市の職員として、KAKEHASHIが実現したい「想いのある人が活躍する」ための制度をつくって社会福祉を守り、横須賀市をより良くしたい。それが可能なら、関わる人たちにとっても横須賀市の施策としてのほうがメリットは大きいです。でも、法律の壁などでそれができないから、KAKEHASHIの存在があります。

 

KAKEHASHIの事業は、目標を実現していく手段のひとつにすぎません。ただ、その見通しは今のところ立っていないので(笑)、当面は引き続き、KAKEHASHIの事業を通して想いのある人たちを稼げる仕組みづくりで応援していきたいです。

 

 

行政の方の副業というと支援に近いものを想像していたため、高橋さんの「稼ぐ」ことにこだわったお話は正直驚きました。「価値を創るのがなかなか大変で」と話す高橋さんの楽しそうな笑顔から、KAKEHASHIを通じて生まれている人のつながりの豊かさを感じました。
 

取材・文/高梨真紀 画像提供/KAKEHASHI