会社員からアトリエ「My little days」を設立

── お菓子作りは元々、お仕事だったのですか?

 

太田さん:
ハロウィーンパーティを行ったころは、会社員をしていました。子どものころからスイーツは好きでしたが、大学の専攻は国際政治。卒業後は会社員として働き出したものの、大好きなお菓子作りを勉強したいと思い、週末はお菓子教室をはしご、さらに休職して1年弱パリの製菓学校で勉強をしたんです。

 

帰国後も料理の仕事についたわけではなく、会社員をしながら週末に日本洋菓子研究家の今田美奈子さんの製菓教室に通うように。その後、結婚、出産をしましたが、お菓子作りはあくまで趣味で、会社員を続けていました。

 

ハロウィーンパーティを機に、会社員をしながら週末にお菓子作りのワークショップを開催するようになり、3人目の出産で勤めていた会社を退職し、そこからメインをワークショップにシフトしました。

 

── 今のお仕事は、初めは本業ではなかったのですね。

 

太田さん:
ハロウィーンパーティで作ったお菓子が好評で、「教えてほしい」「もっと食べたい」という声をいただきました。そこで親子で楽しめるワークショップを定期的に開催するようになり、お菓子のアトリエ「My little days」を主宰することに。

 

すると、ワークショップに参加された保護者の中にメーカーに勤めている方がいて、撮影用にお菓子を作ってくれないかと頼まれたんです。それが現在、オリジナルスイーツブランド「SACHI&CAKES」で製作しているケーキですね。そこからスイーツの仕事がどんどん増えていき、スイーツが自分の人生の軸になっていきました。

 

オリジナルスイーツブランド「SACHI&CAKES」で製作しているケーキ
オリジナルスイーツブランド「SACHI&CAKES」で製作しているケーキ

サイエンススイーツの書籍も、ワークショップに参加された保護者の中に出版社の方がいて、そこからお話を頂いたのがきっかけです。

 

── オリジナルスイーツブランド「SACHI&CAKES」ではワークショップとはまた異なる、芸術的なオリジナルケーキをたくさん製作されていますね。

 

太田さん:
スイーツと同じように、幼い頃から絵を描くなど芸術的なことにも興味がありました。父の仕事の関係で海外の話を聞いたり、体験したり、訪れることも多く、中学のときはホームステイで海外に。海外の子どもたちの自由でクリエイティブな発想に影響を受けることも多かったと思います。

 

大人になってからは海外の美術館にも行くようになりましたが、フランスでは社会が子どもを受け入れている感じで、子どものワークショップを美術館で開催したり、芸術と子どもを結びつける環境が強い。日本とは少し環境が異なっているんです。

 

もっと「子ども」と「芸術」を掛け合わせる勉強がしたいと思い、京都芸術大学大学院の「芸術環境学科(子ども芸術専攻)」に入学し、3年間かけて子どもの学びや、芸術表現について学びました。

 

── 大学院での学びから、得られるものはありましたか?

 

太田さん:
子どもたちの好奇心を育み、個性を豊かにするために、どのような教育環境が必要かをもっと考えていきたいと思うようになりました。例えば昨今のICT教育の発展に合わせて、お菓子のワークショップでプログラミングを取り入れた学びを提供するのも、ひとつの方法かもしれません。

 

京都芸術大学大学院の講座「東京アートファクトリー」の様子。右から2番目が太田さん
京都芸術大学大学院の講座「東京アートファクトリー」の様子。右から2番目が太田さん

子どもの好奇心や個性を伸ばすことは、まさにワークショップの原点。これからもこの課題に取り組みつつ、親子で楽しめるさまざまな場を提供できればと思っています。

 

PROFILE 太田さちかさん

ケーキデザイナー、芸術教育士。日本とフランスで製菓と芸術を学び、子どもとママのためのアトリエ「My little day」を設立。「SASHI & CAKES」ケーキデザイナー、コラムニストとしても活躍。『親子で作れる!摩訶不思議なサイエンススイーツ』(2022年7月刊/宝島社)、『学べるお菓子レシピ 理数系スイーツ』(2022年9月刊/マイルスタッフ)ほか著書多数。

取材・文/酒井明子  プロフィール写真撮影/三好宣弘  写真提供/太田さちか