科学現象から生まれたレシピも

── ほかにもどのようなサイエンスレシピがあるのか気になります。

 

太田さん:
子どもの疑問からだけでなく、科学の視点から思いついたレシピもあります。牛乳とミントエッセンスを使ってマーブル模様を描く「マーブルゼリー」は「表面張力」という性質を、サイエンススイーツを通して子どもに教えられないかなと考えてできたスイーツです。

 

表面張力の力で作る「マーブルゼリー」
表面張力を利用して作る「マーブルゼリー」

 

水などには、できるだけ小さくまとまろうとする働きがあります。色をつけたゼリー液にミントエッセンスを垂らすと、ミントエッセンスが表面張力を弱めようとするため、色のついたゼリー液は逃げようとします。力が反発しあうことで、マーブル模様ができるんです。

 

またひっくり返しても落ちない「無重力パフェ」は、ツノがたったメレンゲから発想しました。卵白を泡立てたメレンゲは空気が多く含まれていてとても軽いので、逆さまにしても落ちません。子どもたちの頭の上でそれをひっくり返すと、びっくりして喜びますね。

 

「無重力パフェ」はひっくり返しても落ちないメレンゲの性質を利用して作った
「無重力パフェ」はひっくり返しても落ちないメレンゲの性質を利用して作った

── SNS映えすると話題のレシピもありますよね。

 

太田さん:
SNSで人気なのは、層が美しい「レインボードリンク」です。カップにドリンクを注ぐと、質量の重い液体ほど下に沈みます。軽い液体→重い液体の順番で入れると、後から重い液体が沈むため色や液体同士が混ざってしまいますが、重いもの→軽いものの順番で入れると層の上に層ができ、混ざらずにキレイに仕上がります。

 

たとえば質量の重い牛乳→オレンジジュース→紅茶の順番で入れると、キレイな層のドリンクが完成しますよ。紅茶やコーヒーのように水で煮出した液体はとても軽いんです。

 

質量の重さを利用して層を作る「レインボードリンク」
質量の重さを利用して層を作る「レインボードリンク」

レインボードリンクは自宅の冷蔵庫にあるドリンクで、いろいろ試してみるのもおすすめ。挑戦してみることで、どの液体が軽くて重いのか、知ることができます。軽い液体を先に入れてしまっても、失敗というわけではなく、学びになります。

 

また作ったなかでどれが美味しかったか、家族に感想を聞いてみるのもいいかもしれません。

 

── レシピはひとつではなく、自分なりにアレンジもできるんですね。

 

太田さん:
子どもたちがアレンジできるように、レシピには幅を持たせています。伸びしろがあることで、子どもたちは自分の個性を反映させることができ、作るのがもっと楽しくなるのではないでしょうか。

 

サイエンススイーツは家庭科や理科など、教科が限定されたものではありません。美しいヴィジュアルは美術、液体の容量は算数など、科目を超えていろいろな見方ができます。

 

サイエンススイーツをきっかけに、いろいろなことを疑問に思い、興味を持ってほしい。疑問を持つことは素晴らしいことです。キッチンのなかから、世の中には楽しいことがたくさんあると伝えられればいいなと思っています。

 

PROFILE 太田さちかさん

ケーキデザイナー、芸術教育士。日本とフランスで製菓と芸術を学び、子どもとママのためのアトリエ「My little day」を設立。「sachi & cakes」ケーキデザイナー、コラムニストとしても活躍。『親子で作れる!摩訶不思議なサイエンススイーツ』(2022年7月刊/宝島社)、 『学べるお菓子レシピ 理数系スイーツ』(2022年9月刊/マイルスタッフ)ほか著書多数。

取材・文/酒井明子 プロフィール写真撮影/三好宣弘 写真提供/太田さちか