溶けないアイス、色が変わるかき氷、層になるドリンクなど「どうしてこのようなことが起きるの?」とびっくりするスイーツが、SNSで話題に。まるで理科の実験をしているように作ることができるサイエンススイーツを考案したのが、ケーキデザイナーの太田さちかさん。サイエンススイーツを始めた経緯や、レシピが生まれるまでを、太田さんに伺いました。
お菓子作りの子どもの疑問を科学で説明
── 太田さんが作っている「サイエンススイーツ」とは、どのようなものなのですか?
太田さん:
「色が変わる」「固まる」「ふくらむ」といった工程に注目し、スイーツ作りに科学の実験のような要素を取り入れたものが「サイエンススイーツ」です。
私は10年以上前から“お菓子とアート”をテーマにした、子ども向けのお菓子作りワークショップを定期的に開催しています。お菓子をいっしょに作っていると、子どもたちはプロセス一つひとつに「なんでこの材料を先に入れるの?」「どうして固くなったの?」など、大人なら流してしまう色々なことを質問してくるんです。
それを説明する際に科学のフィルターを通すと、とてもわかりやすくなることに気づいたのです。
科学って、「AだからBになる」というように、ちゃんと説明ができて、子どもたちが納得してくれる。それに気づいてからは、子どもたちが食べ物を作ったり食べたりするときに口にしている疑問を、科学に落としこんでいきました。
──「科学」と聞くと難しいイメージなのですが、太田さんはもともと理系の方なんですか?
太田さん:
いえいえ。大学の専攻は国際政治学部で、文系でした。
科学と言っても、応用しているのは小学生レベルの知識だけです。たとえば紫いものシャーベットにレモンをかけると色が変わるかき氷は、アントシアニンという色素を持つ紫いもに酸性のレモンを混ぜたから色が変わります。リトマス試験紙を使った実験を、みなさんも小学生の頃にやったかと思います。それと同じですね。
── これまでにどのようなものを作りましたか?
太田さん:
最初に作ったのは「溶けないアイスキャンディ」。子どもたちから「人は溶けないのにアイスはどうして溶けるの?」と聞かれたのがきっかけで、溶けないアイスが作れないかなと。
物にはそれぞれ溶け始める融点があり、氷は0度になると溶け始めます。そのため「溶けないアイスキャンディ」には、寒天を使用。一度冷えて固まった寒天は約70度にならないと溶けないため、室温では溶けません。外はシャリッ、中はふわっとする不思議な食感のアイスが完成しました。
すべて疑問を一気に解決できるわけではありませんが、日常からアンテナを張っておくと、ふとしたときに「これはレシピに使えるかも!」と結びつくことがあります。
── ワークショップに参加している子どもたちのリアクションはどうですか?
太田さん:
調理をするプロセスでさまざまな反応が起きるため、それを楽しみながら作っています。ワークショップではお菓子作りだけだと女の子の参加者がメインですが、「科学」「実験」という要素が加わると、男の子の参加者も増えます。リピーターも多いですね。
親子でいっしょに自宅で作るときは、意外とママよりもパパのほうが張り切って参加する家庭も多いようですよ。