社屋は「新しい化学反応を生み出し続ける実験の場」

施設内には現代アートが多数展示され、社員向けのアートツアーも開催されている

──社会に開けた会社にすることで、事業への気づきだけでなく心の豊かさにもつながっているのですね。地域の方はどのように利用されていますか?

 

江崎さん:
「PARKSIDE」エリアは、コクヨの文房具を試せるコーナーやコーヒースタンドもあるので、地域の方の憩いの場として利用していただいています。コーヒースタンドで休憩したり、仕事をしたり…各々の時間を過ごされています。お子さん連れの方もよく見かけます。

 

──「新しい化学反応を生み出し続ける働く・暮らす・学ぶの実験の場」と謳っていますが、どのような試みが行われているのでしょうか。

 

江崎さん:
2階には「オープンラボ」を設けており、他企業との共創したプロトタイプを展示しています。まだ事業になるかわからないものですが、新しい技術の社会実装を目指して、「未来のオフィスを共に考えていきましょう」という気持ちで展開しています。

 

コーヒースタンドの脇に設置されている「Infarm(インファーム)」や、オフィスフロアにある「社長のおごり自販機」も「実験」の一環。「Infarm」はベルリンの企業が開発した次世代型の屋内栽培システムで、都市の狭い土地でも水耕栽培ができるというものです。敷地内で野菜やハーブを育てて、販売したり、カフェメニューとして提供したり…社内での地産地消を目指した取り組みです。

「Infarm」ではバジルやミントなどを栽培。栽培環境は遠隔で操作・管理されている

「社長のおごり自販機」は、サントリーが展開する自動販売機で、コミュニケーション促進を目的にしたものです。この自販機は、「二人で一緒に購入する」ことが前提。二人の社員証をかざすことで飲み物を購入することができます。ちなみに飲み物の代金は「企業側が負担」ということで、このようなネーミングがつけられたそうです。

「二人で購入」が前提の自販機は、「ちょっと休憩しようか」などコミュニケーションのきっかけを作ってくれる

また、レセプション脇に新設した「オールジェンダートイレ」も実験的に取り入れたもののひとつです。これを作ったことで、社内SNSでジェンダーの議論が起こったり、勉強会が開催されたり、自主的に考えるきっかけにもなっています。

オールジェンダートイレ。「誰もが安心して使える」ための工夫が各所に採用されている

──どれもとてもユニークですね。現代の課題やニーズに合ったシステムを、積極的に導入されているのですね。

 

江崎さん:
「これが未来のオフィスの形」という正解は見出しておらず、ゴールも設けていません。今後も、働くことや暮らすことをより豊かにする学びや気づきを、この場所から提案していきたいです。実験、検証の場として、社外の視点や知見を取り込みながら、未来につながる価値を探求したいですね。