社屋リニューアルで起きた社員の変化

「育む」フロアは明るくカジュアルな雰囲気。奥には若手社員とフランス人アーティストが共創したアートも展示されている

──オフィスフロアも大きくリニューアルしたそうですね。コロナ禍の働き方を意識してのことでしょうか。

 

江崎さん:
弊社でもテレワークを選択する社員が増え、出社率は現在約40%。それに伴い、「この作業は出社してチームで行いたい」「この会議はオンラインで参加しよう」など、自分自身で「どのように働くか」を考えるようになってきました。

 

私たちは、今後のオフィス空間の機能として「新たな経験や学び、刺激となるつながり」が求められていると考えています。そこで執務スペースをオフィスに出社する目的別にスタッキングすることにしました。

 

──各フロアで、デザインやインテリアなど、雰囲気がまったく異なりますね。

 

江崎さん:
「集う」「試す」「育む」「整う」「捗る」などと、それぞれのフロアにコンセプトを設け、それに適したデザインで設計しています。

 

たとえば、6階の「育む」フロアでは、「人間関係や自分のスキルを育む」ことを目的に定め、「新入社員」「ベテラン社員」など特定の人材が部門横断型で座るエリアを設けました。各テーブルには、「今誰が座っているか」がわかるプレートを出し、気軽に声をかけて良いエリアとしています。

 

──明るいポップな空間デザインも、気軽に話しかけやすい印象ですね。

 

江崎さん:
オフィスへの出社率が下がると、雑談も少なくなります。これまで存在していた「偶然の雑談」を意図的に生み出そうという実験です。

 

反対に「今日は仕事に没頭したい」という場合は、4階の「捗る」フロアへ。他のフロアと比べるとオフィスらしいデザインで、席の配置やパーテーションの高さも集中しやすい仕様になっています。

 

また、これら執務フロア「ライブオフィス」となっていて、コクヨのファニチャー事業部の営業ツールとして、オフィス家具などをお客さまに見学していただけるよう位置づけています。

「捗る」フロアは集中しやすいレイアウトと設備

──オフィスであり、ショールーム機能も兼ね備えているということですね。席はすべてフリーアドレスなのでしょうか。

 

江崎さん:
固定席はなく、予約ができる席とフリーの席に分かれています。予約状況は自宅からでも確認できるので、その日の作業や席の状況を見て出社する人が多いですね。

仕事や読書ができる「DIVERARY(ダイブラリー)」

──リニューアルを経て、社員の皆さんに変化はありましたか?

 

江崎さん:
まず、服装がカジュアルになりました。以前から服装の自由化は決まっていましたが「どこまで崩して良いのかわからない」という社員も多く、カジュアルな服装で出社する人は少ない印象でした。しかしリニューアル後は、「自分らしくいられる空間」と捉えてもらうことができたからか、髪の色も服装も自由度が増したように思います。「自分らしく働く」に一歩近づいたのではないでしょうか。

 

また、最近では「自分の企画でイベントをやってみたい」「こんな実験を施設内でやってみたい」と自主的にプレゼンに来る社員も増えました。オフィスを活用して、個人の成長や自己実現につなげてもらえたら嬉しいですね。

 

 

「今のオフィスの悩みを解消したい」とコクヨに訪れる他企業からの相談内容も、現在では「これからのオフィスを考えたい」と未来を視野に入れたものに変化してきたそうです。オフィス空間をどう使うかも社員に委ねられているコクヨの新オフィス。社員の主体性を重んじるマネジメント体制も次世代型に大きく変化していることを感じることができました。

 

取材・文/佐藤有香 撮影/大童鉄平